北海道スペースポート整備「大樹町で年間10機のロケットを打ち上げたい」…スペースコタン・小田切義憲社長
北海道東部の十勝平野で、ロケットの打ち上げに使う商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」が整備されている。地元の大樹町とともに運営を担うスペースコタンは、宇宙産業を通じた地方創生を目指している。小田切義憲社長に話を聞いた。(聞き手・バッティー・アイシャ)
1985年から取り組み
――事業を始めたきっかけは。
「宇宙港、スペースポートを作るという事業は、1985年から大樹町が時間をかけてやってきた取り組みで、2021年4月に会社を設立し、いよいよ本格的な事業になった。
歴史を遡ると、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))の前身がかつて、日本版のスペースシャトルをやろうという計画があった。その実験場所を探していた。スペースシャトルは垂直に打ち上げる射場と降りてくる滑走路の1セットが必要になる。そうした実験ができる場所が日本にはなく、大樹町が受け入れて準備をしていたら、計画がなくなった。
せっかく施設があるので、皆さんに使って頂きましょうという話になった。飛行船が成層圏に入ったときに、アンテナ替わりに無線通信できないかといった実験などを40年ぐらいやってきた」
――発射場整備の状況は。
「民間ロケットの打ち上げ射場『LC―1』を建設中で、25年度の完成を目指している。大樹町に拠点を置くロケット開発の振興企業、インターステラテクノロジズが開発中の小型衛星向けロケット『ZERO』の打ち上げを予定しており、準備を進めているところだ。
6月には滑走路の延伸工事が完了し、1000メートルから1300メートルに拡張された。より規模の大きい実験や、機体の受け入れが可能になった。高頻度で多様な打上げに対応するための新たな射場『LC―2』や、宇宙空間を経由して大陸2地点間を高速で移動するP2P輸送用の3000メートル滑走路の整備も計画している」
『天然の良港』アピール
――海外企業にも、積極的にHOSPOを売り込む。
「航空業界でキャリアを積んできたが、宇宙業界と事業面の共通点は多い。航空における空港ビジネスは、航空会社と契約して乗客を運ぶ。宇宙港のビジネスは、ロケット事業者と契約し、人工衛星や将来的には乗客を運ぶ環境を整備する。