「聞こえにくい高齢の親と意思疎通ができず認知症も心配」難聴と認知症の最新事情をレポート【医師解説】
難聴と寿命の関係の研究も進む
「近年、認知症に限らず、難聴と寿命の関係性についての研究も進んでいます。 さらに、1999年から2012年の間に研究調査に参加し、聴力検査と補聴器使用に関するアンケートに答えた9885人を対象に、難聴・補聴器の使用・死亡率の関連を調べた今年(2024年)の研究報告(※4)があります。 この論文は、補聴器を毎日常用しているかたは、それ以外のかたがた(たまに使うかたや全く使ってないかた)と比較して死亡率が低いことを示しています」(神崎さん) 現在、神崎さんは、特定臨床研究として「難聴者に対する補聴器介入の有無における認知機能の影響に関する比較試験」(※5)に取り組んでいて、東京医療センターをはじめ全国18施設で実施されています(2026年3月まで)。これは、「補聴器によって認知機能低下は予防できるか?」などを調べる目的があります。治験に参加する人を募集しているとのことです。 *** 認知症と難聴の関連性や、難聴にかかわるさまざまなリスクについて、世界的に研究が進められています。現在、日本では、平均寿命と健康寿命とには10年の差があると言われています。 人生100年時代、認知症を遠ざけてなるべく健康な状態で元気に過ごしたいもの。そのためには、家族や友人など周囲とのコミュニケーションが大事な役割を担っていると思います。 相手の会話が聞こえにくいと、発言も減ってしまうといわれています。積極的に会話をして、活力ある生活を送るためにも、聞こえることの大切さを今一度見直したいものです。 ※1/Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE)(難聴高齢者の認知機能低下を軽減するための聴覚介入と健康教育制御の比較)。 ※2/Hearing Difficulty and Risk of Mortality(難聴と死亡リスク) ※3/Associations of Hearing Loss and Dual Sensory Loss With Mortality(難聴および二重感覚喪失と死亡率との関連性) ※4/Association between hearing aid use and mortality in adults with hearing loss in the USA: a mortal-ity follow-up study of a cross-sectional cohort(米国における難聴成人の補聴器使用と死亡率との関連:横断的コホートの死亡率追跡研究) ※5/独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 難聴者に対する補聴器介入の有無における認知機能の影響に関する比較試験 取材・文/立花加久 イラスト/奥川りな