こんなに「大人が集まるディズニーランド」は日本だけ…子ども向けだった「雑貨」を日本人女性が夢中で買うワケ
■ブランド×ブランドの爆発力 中でも印象深かったのは、私が直接交渉させていただいたキリンの「午後の紅茶」とのコラボ案件です。年間売上で軽く数億本を超える人気商品です。 その午後の紅茶のボトルに、ディズニーの絵柄を載せてもらうというキャンペーンでした。私たちが施した工夫は、絵柄の数を10~15種類に増やすことでした。そうすることによって、ディズニーファンは1本だけでなく全部の絵柄が欲しくなり、10~15本全部を購入してもらえると考えたのです。こうすることで、本来は売れなかったかもしれない1本が売れるようになるわけです。 このやり方は、ヤクルトとコラボした際にも使い、効果を上げました。このように、大きなライセンシーと組むことによって、Win-Winの関係を構築することができるようになりました。ディズニーも儲かり、ライセンシーも儲かるわけです。 ディズニーにもブランドがあり、ライセンシーになっていただくトップ企業も独自のブランドを持っていますから、ブランド×ブランドでかなりの爆発力を持って消費者に訴求できるようになるため、この勝ち組企業と組むという施策は大当たりしたのです。 ■7年間で売上が2.5倍に 実際のところ、どれだけの効果があったかというと、トッププレーヤーをメインに契約してライセンシーになってもらった結果、他の施策も功を奏し、売上が7年間でなんと2.5倍にまで伸びました。また、ディズニーライセンス商品の上代売上が初めて5000億円を超えました。 勝ち組企業と組んでコラボレーションをし、パートナーシップを組むことを推進する施策のメリットは、まず、第1にディズニーのブランドイメージを守ることができるということでしょう。 自社ブランドを安売りせず、同じく強いブランドを持った勝ち組企業とコラボすることで、ブランド価値を損ねるリスクが減り、むしろ多くの商品が市場に並び、コラボ商品のTVCMも流してもらえるので、消費者とのタッチポイントが増え、ブランド認知も上がります。 第2に、ディズニーと組んでくださる大手ライセンシーにとっても売上がアップする、Win-Winの関係になれることもメリットです。ディズニーが大手とだけ組んでいれば、ディズニーのブランド価値は守られ、同時にライセンシーのブランド価値も守られます。仮に、ディズニーがどんなライセンシーともコラボしていたら、大手のライセンシーが作るディズニー関連商品には特別感がなくなってしまいます。 強いブランドを持つ大手と組むことで、ディズニーもライセンシーもともに勝ち続ける構造を築くことができたのです。 ---------- 中澤 一雄(なかざわ・かずお) KUREYON代表 1950年、奈良県生まれ。同志社大学工学部電子工学科卒業後、1973年4月、日本マクドナルド(株)に入社。オペレーション部門のディレクターやマーケティング部門のシニア・ディレクターを歴任。米国マクドナルド社本社に3年間勤務。POSや「メイド・フォー・ユー」システムの開発に関わる。1999年、ディズニーストア・ジャパン(株)にストア・オペレーションのディレクターならびにマーケティング、セールス・プロモーションのディレクターとして入社。3年間で事業規模を2倍にするなど経営再建に手腕を振るい、総責任者として活躍。2004年、日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)取締役執行役員常務に就任。2008年4月、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)のライセンス部門・コンシューマープロダクツ日本代表に就任。「おとなディズニー」の導入による消費者ターゲットの拡大などにより、7年連続で部門の増収増益を達成。2015年10月、ウォルト・ディズニー・コリアのマネージング・ディレクターに就任。2016年8月より、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)の各事業部門の統括責任者として、シニアゼネラルマネージャー/シニアバイスプレジデントに就任。2018年1月より、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)の相談役に就任。2018年6月、大幸薬品(株)の社外取締役に就任。2019年9月、常勤監査役に就任。2020年6月、専務取締役に就任。2022年3月に退任し、2024年現在、複数の上場企業の顧問を務める。また、コンサルティング会社(株)KUREYONを立ち上げ、代表取締役に就任。著書に『外資の流儀 生き残る会社の秘密』(講談社現代新書)がある。 ----------
KUREYON代表 中澤 一雄