「青春18きっぷ」どう"改悪"? 実は普通の乗車券でも、お得に乗れる裏技があったりします
青春18きっぷのリニューアルは、これまでの節約旅行を根本から考え直さなければならない、大々的な変更となるため、旅好きの間で大騒ぎとなっています。とはいえ青春18きっぷに類似した乗り放題きっぷが出ていたり、「のんびり旅をしながらお得に移動する」といった点では、単なる片道キップにも見落とせない魅力があるんです。 【もっと写真を見る】
JRグループから、旅人界隈を騒然とさせる案内が発表されました。それが10月24日に発表された「青春18きっぷ」のリニューアルについてです。今回のリニューアルは、これまでの節約旅行やお得な旅スタイルを根本から考え直さなければならない、大々的な変更となっています。 「青春18きっぷ」は、全国のJR線の普通列車・快速列車に乗り放題のフリーパスです。年齢制限なしで"1日乗り放題"を5日(回)ぶん楽しめるので、使い方によっては究極にお得な切符として長年旅人に愛されてきました。 ●改悪1 期間中いつでも乗車連続乗車のみになる 青春18きっぷのいちばん大きな変更点は、これまで利用期間内であれば日付を分散して5日間いつでも乗車できたのが、利用開始から「連続5日間」に限定されたこと。18きっぷ購入時に利用開始の日付を指定して、そこから5日間、JRの普通・快速列車の普通車自由席、BRT(バス高速輸送システム)およびJR西日本宮島フェリーが乗り放題となります。 また、「5日間用」(販売価格1万2050円)だけでなく、新たに「3日間用」(販売価格1万円)が発売されました。販売期間は11月26日から2025年1月8日までです(5日間用は25年1月6日まで)。 ●改悪2 複数人での利用ができなくなる これまでは分散利用ができたため、青春18きっぷを今週末に2回使い、来週末に3回使うなど、週末を使った旅を2度するといった使い方ができましたが、それが出来なくなります。筆者の場合は1度の旅で使うことが多いのですが、5日間電車に乗り続けるのは辛いので、途中下車して知らない町を数日探訪し、身体を休ませながら長距離移動するといったスタイルを楽しんでいました。しかし、新ルールでは乗らない日も利用日としてカウントされてしまうため、休んだ回数がムダになってしまいます。 また「連続5日間」への変更に伴い、これまで可能だった「複数人」での利用も対象外になります。 例として、宇都宮駅からディズニーランドのある舞浜駅までJRだけで行くと、通常料金は片道2310円なので往復で4620円かかります。青春18きっぷの料金は5回分1万2050円ですので、5人グループの場合、料金はひとり2410円。従来のルールであれば、これを5人で使うことで、約半額で日帰りディズニー旅行ができたわけですが、こういった使い方も塞がれてしまいました。 ●18きっぷと組み合わせて激安海外旅行を楽しんでいた人にも影響 この「連続5日間」と「複数人利用不可」の影響は、国内鉄道旅に留まりません。たとえば以前の連載記事「激安! 青春18きっぷ+フェリーで韓国・釜山へ行ってみた」で紹介した、韓国・釜山行きのフェリーで行われていた青春18きっぷ割引キャンペーンがそれ。今夏は同様の半額キャンペーンが大阪と釜山を結ぶ「パンスタークルーズフェリー」で実施されていました。 このキャンペーンが、もしまた開催されたとしても、新ルールでは「連続5日間」なので、韓国に滞在している日数がムダになってしまいますし、フェリーの発着所までグループ移動する際にも利用できず、お得度はかなり下がってしまいそう。 そのほか、移動の多い筆者は、地方空港発の国際線航空券が格安だった場合、最も近い羽田空港をスルーし、地方空港までわざわざ青春18きっぷで行ってから飛行機に乗るという、フリーランスの強みを活かした旅バカテクを使っていましたが、連続5日間という縛りで、それも旨味は小さくなってしまいました。 ●青春18きっぷに類似 お得な"乗り放題"きっぷを探そう 以上のことから、「連続5日間」と「複数人利用不可」ということで、今後は利用シーンをよく考えて18きっぷを使用する必要がでてきました。しかしながら、JR各社は青春18きっぷに類似した、お得な乗り放題のきっぷを販売しています。 ・JR四国「四国再発見早トクきっぷ」 たとえば、JR四国では「四国再発見早トクきっぷ」(1日2400円/小児半額)を発売中で、JR四国線全線と、JR四国バスのうち路線バス(大栃線、久万高原線)が乗り放題となります。利用は土曜日と休日のみに限定されますが、青春18きっぷと違い、利用日の1ヶ月前から前日まで通年販売されます。 ・JR九州「旅名人の九州満喫きっぷ」 JR九州は「旅名人の九州満喫きっぷ」(1万1000円)を販売中。こちらは九州全鉄道の快速・普通列車の1日乗り放題が3回ぶん含まれており、青春18きっぷと比べると1回約3666円と割高ですが、有効期間の3ヵ月以内なら日付を振り分けて利用でき、複数人での使用もオーケーです。青春18きっぷと異なり、通年発売なのもいいですね。 ・JR東日本/JR北海道「北海道&東日本パス」 JR東日本とJR北海道は、「北海道&東日本パス」(1万1330円)を青春18きっぷと同様、春・夏・冬の各シーズンに発売しています。2024年の冬期も発売がアナウンスされ、12月10日から1月10日のうち連続する「7日間」、JR東日本とJR北海道に加えて、青春18きっぷでは対象外の青い森鉄道線、IGRいわて銀河鉄道線、北越急行線を含む全線の普通・快速列車の普通車自由席とBRT路線が乗り放題となります。 料金は青春18きっぷよりも割高ですが、1日ぶんのコスパで考えれば断然お得。より長く鉄道での周遊を楽しみたい旅人にはオススメです。 もちろん青春18きっぷは、日本全国のJR路線で使えるのが強みですが、旅程次第ではこういった各社のオトクなきっぷを使う方が、アレンジしやすくなるわけです。 ●学生は学割で通常きっぷを買ったほうが結果的にお得? ところで学生が帰省を機に途中下車しながら旅をするのに青春18きっぷを利用していたというケースは多いはずですが、学割で片道乗車券(紙)を買ったほうがお得なケースもあります。 今回のリニューアルで新たに青春18きっぷ「3日間用」が登場しましたが、もしこの3日間用を使って東京から大阪へと帰省する場合は、当然ながら3日間で大阪へ移動する旅程となります。一方、東京駅から大阪駅への片道乗車券を購入すると8910円で、学割を使うとさらに2割引となって7120円になります。 「片道乗車券だと1日で移動しなければならないので、何がどうお得なの?」と思うかもしれませんが、ここからが大事な話。実は営業キロ(km)が101キロ以上200キロまでは有効期間が2日間に延び、以降は200キロごとに有効期間が1日ずつ増えていきます。さらにJRの場合、営業キロが101キロ以上になると、後戻りしない限り何回でも乗車券の区間内の途中下車が可能なんです(一部例外あり)。 東京駅から大阪駅までは約550kmなので、有効期間は4日間になります。つまり、3日間用の青春18きっぷよりも、利用期間は長くなるという計算です。普通の片道乗車券でも帰省のついでに、各地で途中下車して観光や宿泊をするといった旅行が充分、楽しめます(ただし途中下車ができるのは乗車券のみ。特急券は乗車区間や営業キロにかかわらず途中下車できないので注意しましょう)。 もちろん片道乗車券の場合、途中下車できるとはいえ乗車ルートは決め打ちのみ。青春18きっぷのように、後戻りしたり途中で別ルートの路線を選ぶといった自由さはありませんが、「のんびり旅をしながらお得に移動する」といった点では、単なる片道キップも見落とせない魅力があるわけです。 というわけで青春18きっぷのリニューアルにより、この冬からは従来のテクが使えず節約派のトラベラーには、移動手段の大幅な見直しが迫られそう。個人的には以前までの使いやすい運用に戻して欲しいなとは思います。 この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama) 世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン) 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン) 文● 中山智 編集●こーのス/ASCII