大勝の裏で行われていた日本代表の実験。「角度によってはすごく停滞していた」守田英正の苦心と手応え【コラム】
サッカー日本代表は5日、FIFAワールドカップ26アジア最終予選(3次予選)で中国代表と対戦し、7-0で勝利した。直近2大会の最終予選は初戦でいずれも敗れているだけに鬼門とされてきたが、終わってみれば大きな差がついていた。遠藤航とともに中盤で攻守のタクトを振った守田英正は、この結果に安堵していた。(取材・文:加藤健一) 【一覧】2026年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選 順位表
●「見る角度によってはすごく停滞していた」
「先制点をセットプレーで取れたのは大きかった」と守田が言う。CKから生まれたゴールは、最終予選初戦で警戒心と緊張感を包んでいた日本代表を解放してくれた。久保建英が蹴ったアウトスイングのコーナーキックは、ニアに走り込んできた遠藤航の頭にピタリと合った。「練習通り」と話した久保は、「得意なんで」と自信たっぷりにアシストシーンを振り返っていた。 12分に生まれた先制ゴールで日本代表が落ち着いてゲームを進められたことは確か。一方で、守田は「見る角度によってはすごく停滞していたというか、持たされていた感覚も少なからずあった」と言う。果たして、日本代表は前半アディショナルタイムに三笘薫が追加点を挙げるまで、30分以上もゴールネットを揺らすことができず。決定的なチャンスもさほど多くなかった。 いつものように、守田はピッチで試行錯誤していた。立ち上がりはボール保持の局面で3バックの前で遠藤と並ぶ形が多かったが、10分あたりから動きが活発になる。たとえば、10分のシーンでは左CB町田浩樹から左WB三笘薫へボールが渡った瞬間、左ST南野拓実がサイドへ斜めに走ることで空いたスペースに、守田が縦に走り込んでいる。遠藤と縦関係になり、積極的に高い位置を取ったり、スペースに走り込んでいくシーンが増えていた。 楽勝にも見えた中国代表戦だが、ピッチ上では細かい修正を繰り返しながら、立てこもった中国代表を崩そうとしていた。守田は前半の狙いを明かす。
●守田英正が狙っていた「相手が嫌がる動き」
「(CB)3枚、(ボランチ)2枚の僕と航君引き込んで、うちのシャドーをうまく真ん中で受けさせて、っていう狙いでやったんですけど、正直(日本の)CBに(相手FWの)プレスがかからなくて、町田がフリーで受けれちゃうんで。あんまり(相手のプレスを)引き込んでも相手がついてこないんで、結局前に行けちゃうっていうのがあった。でもなんか前に突っ立っててもバランスはいいけど、ボール入った時にちょっと窮屈になるよなとか、いろいろ考えながらやってて…」 守田の試行錯誤は、2-0で迎えた前半に連続ゴールという形で結実する。町田から縦パスを受けた南野拓実は、三笘薫にパスを送る。5バックに変わっていた相手のディフェンスラインをかき乱すためにポケットに走り込んで、三笘からパスを引き出す。南野は切り返して右足でシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。 実はこのゴールの約90秒前に似たような動きがあった。守田からライン間でパスを受けた南野がペナルティーサークルで待つ上田綺世へパスを出そうとしたが、これが相手に当たって左サイドの三笘の下へ。パスを出した瞬間から走り始めていた守田は、空いていた相手の右WBの裏のスペースに走り込んでいる。三笘からパスを受けた守田はヒールで三笘に戻し、三笘のクロスをファーサイドに走り込んだ堂安律が合わせようとしたが、わずかに合わなかった。 「僕が受けるより奥に(パスを)つけてもらって、それに反応して3人目で入っていくとか、ボックスに入っていく方が動きとしてはスムーズだし、相手として嫌だからそれは狙っていた」