大勝の裏で行われていた日本代表の実験。「角度によってはすごく停滞していた」守田英正の苦心と手応え【コラム】
●「正直難しかった」「90分で考えたら…」
相手が後半に[5-3-2]になったことで、[4-4-2]だった前半よりは、サイドにおけるマッチアップが明確になった。それにより、前半は三笘に相手のSBとSHが2枚で対応していたが、後半はWB1人で対応する形に変わった。5バックの相手に対してポケット(ニアゾーン)に侵入して折り返す形は常套手段とも言える。それを開始5分ほどの時間で狙いを定めて形にしていた。 ただ、プレーしていた守田は「正直難しかった」と言い、一筋縄ではいかなかった様子だった。「システムで優位性を取っているにもかかわらず、それをうまく活用できていなかったなと僕は感じる」と振り返った。 それでも、「あまりサイドに開かず、薫が(サイドに)張っていても、スペースがあっても、あまり斜めに落ちたり開いたりせず、相手のサイドバックが入ってからニアゾーンを取るとか、それに対してくさび(を受ける)役とか、そこら辺を考えていた」と狙いを持ってプレーしていた。それが後半のゴールラッシュにつながったことは間違いない。2得点を挙げた南野からはこう見えていた。 「前半はうまい選手、ボールを持てる選手が多かったから、もうとにかく動き回って、スペースを作るところを結構意識していて、全員がトライした形が後半の2つのゴールで実った。前半にこれがありそうだなって思っていた形だった」 サッカーはいろんな見方ができる。試合後に複数の選手に話を聞く限り、停滞感を感じていたのは守田だけではなかった。一方で守田は「サッカーは90分なので、そう言った意味で(相手を)疲れさせたという見方もできる」と話す。「後半は自分たちが主体的に動きて相手を動かせたので、90分で考えたらすごくいい戦いだった」と試合を総括した。 日本代表がピッチで試行錯誤しながら得点の糸口を見つけ出し、ハーフタイムでその意思統一を図ったことが、後半の大量得点につながった。ゴールという結果にむすびつくことはなかったが、その中で守田は重要な役割を果たした。守田は日本代表の実験者であり、仮設を立て、検証し、有効な打開策のヒントを見つけていた。 (取材・文:加藤健一)
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