古今東西 かしゆか商店【真珠のネックレス】
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは三重の伊勢志摩。日本有数の真珠の産地で養殖から製品作りまでを手がける職人たちと出会いました。 【フォトギャラリーを見る】 昔から身近にあり、愛着や親しみを感じてきた真珠。あの白い輝きがどんなふうに生まれるのか知りたくて、日本有数の真珠産地・三重県伊勢志摩の英虞湾を訪ねました。 「アコヤ真珠は透明感のある “照り(輝き)” に優れています」 と話すのは、〈ヤシマ真珠〉5代目の山本行太さん。ヤシマ真珠は真珠の養殖から採珠、選別、加工、販売までを一貫して行っている、国内でも数少ない作り手です。まずはフェリーに乗って、英虞湾の間崎島にある自社の養殖場へ。迎えてくれたのは、養殖を手がけている佐藤珠樹さんです。
「真珠の基となる “核” と、“外套膜” と呼ばれる細胞片を真珠貝の中へ移植し、海で大切に育てます。すると貝の体内に真珠袋が形成され、その内部で真珠層を作り始めます。やがて海水温が下がると、真珠層の表面の結晶が薄く広く硬く引き締まり、つるっとした照りが生まれるんです」 と、海から引き上げた貝を一つずつ開ける佐藤さん。粒が小さい真珠やグレーがかったものなど姿はさまざまです。しかも真珠が形成されていない場合も珍しくなく、開けるまでわからないのだとか。
「核入れの技術や時期、天候によっても色や形が違ってきますが、それも真珠が生きている証拠。この子たちの大切な個性です」 その個性を生かして商品にするのが加工やデザインの仕事──という話を聞きながら、次は伊勢市の丘の上に建つ工房へ移動します。
ここでは真珠を大きさや色ごとに選別。手作業で孔を開け、ネックレスなら粒のバランスを見ながら配列を決めて、糸に通します。例えば40cmのネックレスの場合、直径6mmの真珠が約70個。整然と並んでいますが、よくよく見るとちょっとずつ形が違っているのが、とてもかわいい。