習近平の「経済音痴」が引き起こした中国の悲劇…!投資銀行エリート「美人社員」を身投げに追い込んだ「絶望」の中身
転落
中金公司職員の平均給与額は2021年の116.42万元(約2328万円)から2023年には70.04万元(約1400万円)となったのだが、これと並行して夫の郭東の給与も削減されたらしい。郭東は「親方五星紅旗」の公務員だから給与は安定していると高を括っていたのだろうが、そうは問屋が卸さなかった。財政危機に陥った政府にとって最も手っ取り早い対応策は公務員給与の削減と支払い延期だろうが、こればかりは鄭雯露にとって想定外のことだった。 郭東の給与がどの位削減されたかは定かではないが、鄭雯露の給与が中金公司の平均額だと仮定すれば、2023年の給与は70.04万元だから、これを13カ月分として考えれば、月給は5.39万元(約107.8万円)になる。しかしながら、2024年になると中金公司は職員給与の削減幅を増大させた。この結果、ネット上の情報によれば、中金公司職員の平均月給は3.5万元(約70万円)になったというのだ。 2024年に鄭雯露の月給が実際に幾らになったかは不明だが、この平均月給と同額だとすれば、上述した住宅ローンの返済額である月額5.68万元(約113.6万円)を支払うことは不可能であり、たとえ郭東の減額された月給を加えたとしても、彼らの生活費を考えると大幅な赤字とならざるを得ない。 住宅ローンの返済が困難となっただけでなく、彼らが住宅を購入した直後から住宅価格そのものの低落が始まり、その下落幅は頭金として支払った400万元(約8000万円)を上回るほどであった。どうして住宅価格の動向を見極めて、購入時期を調整することができなかったのか。すでに後の祭りだが、泣くに泣けずで、悔やんでも悔やみきれないのだった。 こうした収入減によるストレスや住宅価格の下落などの原因で、鄭雯露と郭東は頻繁に夫婦けんかをするようになった。さらに間の悪いことには、鄭雯露が妊娠したことで、悪阻(つわり)などによる肉体的なストレスも彼女の精神をむしばんでいったのだった。彼ら夫婦は購入した住宅の引き渡しを受けていたが、不動産権利書は担保に取られており、売却を検討しようにも住宅ローンの規定により5年間は転売が禁じられているので、手も足も出ないのが実情であった。 この結果として、心身共に疲れ果てた鄭雯露が選んだのは自殺によって悩みも苦しみも無い世界へ旅立つことだった。お腹の中の子供を道ずれにして死のうと決意した鄭雯露が最終的に自殺を決行する場所に選んだのは、中金公司上海分公司が入居する滙亜大厦からの身投げであった。それは給与の大幅削減により彼女自身の生活を成り立たなくさせた中金公司に対する意趣返しであったとも言えるだろう。