『室井慎次』想像以上の新キャラ誕生 脚本・君塚良一が絶賛する“本広演出”の妙
さらに、今作では「踊る」史上最悪の猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)の娘・杏を、福本莉子が演じている。「ああいう強烈な人間は、ハリウッド映画でも続編とかで、息子とか兄弟が出てきますよね。演じるのはなかなか難しいんですが、福本さんはとても素晴らしかったと思います。真奈美に似て見えるのは、彼女の演技力ですよね」と絶賛。また「真奈美は刑務所に入っていますが、『やっぱり登場させようよ』となりました。そういうファンサービスを忘れなかったのが『踊る』なんですよね。今回、最初の段階では僕の個人的な思いで動いて、それを忘れかけていましたけど、やはり違うと思って、湾岸署の仲間たちも少し顔見せしましょう、となりました」と湾岸署にいた緒方薫(甲本雅裕)や森下孝治(遠山俊也)の登場理由を明かした。 松下洸平が演じた捜査一課の刑事・桜章太郎も際立っていた。「最初は、青島っぽい人が室井さんとぶつかると面白いかもということだったんです。事件解決にそれほど尺を取れないので、そこをきゅっと締めるために、感覚的に優秀な直観系の人を置こうと思いました。でも結果的には青島には似ていない。これは、(本広克行)監督と彼が、ちょっとオーバーアクトな男という違うものにしているんです。おそらく、ずっと容疑者をそうやって翻弄して、ボロを出させてきたんじゃないかという刑事なんですよ。青島とは違うやり方ですね」とキャラクターを説明。「僕が思っていたものとはぜんぜん違って、それ以上のものでした。想像すらしていなかったキャラクターを作ってくれました。なかなかの男です」
ただひたすらに書いていた
そして君塚は、本広克行監督の手腕についても大絶賛する。「僕は脚本には責任を取りますが、基本的にキャスティングや美術などは、全てお任せします。監督とプロデューサーを信じていますから」としたうえで、「今回は特に、本広監督の演出力がすごいなと思いました。途中からはもう、僕はあまりト書きを書かなくなっていましたね」。たとえば、『敗れざる者』のラストで車庫に吊るされた室井のコートが燃えるシーンは、「十字架みたいに燃えるでしょ。あれは、監督がそのシチュエーションに自然にもっていってた。僕は書いてないです。今回、コメディーにするのか、泣かせるのか、すごく迷ったと思うんですけど、全部がいい塩梅でした」と感嘆。「以前の『踊る』のように、カットをガンガン割って笑いを作るやり方をしてないし、泣かせも意外と淡々とやっていて、ベタっとしてない。日本映画とアメリカ映画の中間くらいの演出をされていました。新しい本広監督の世界です。やっぱりすごい男だと思いました」 今回の物語は、家族がベースとなっている。「おそらく監督は、初挑戦に近い世界だったと思いますが、本広視点がちゃんとあった。僕は、彼が昔撮った映画『UDON』に近いと感じました。あれは、彼の故郷に対する視点でしたからね。故郷というものに対しては、誰もが優しくなるじゃないですか。今作も室井の故郷ですから」