不登校増加、チームで支援 「心の健康観察」で早期対応 奄美市が対策プロジェクト
不登校の小中学生が全国で増加している。文部科学省が10月31日に公表した調査のまとめによると、2023年度の不登校児童生徒数は約34万6千人で過去最多。鹿児島県奄美群島の自治体の状況を見ると奄美市では、21年度から23年度までの3年間で不登校を含む長期欠席者(年間30日以上)が1・9倍となった。子どもたちを取り巻く環境が変化する中、不安や悩みの早期把握と丁寧な個別の支援が求められている。 不登校の定義について、22年12月改訂の生徒指導提要では「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」としている。 文科省の調査によると、全国の不登校児童生徒は11年連続で増加。在籍児童生徒数に対する不登校児童生徒数の割合は前年度より0・55ポイント高い3・72%だった。県内の23年度不登校は小中合わせて4652人。 奄美市教委によると、市内における24年度の不登校児童生徒数は6月末現在で97人(小学生28人、中学生69人)。長期欠席者が増え続ける現状を踏まえ、市教委は25年度から「あまみ不登校対策プロジェクト~あまみの子どもたちを光に~」を実施する。 同プロジェクト計画には、学校や行政、スクールソーシャルワーカー(SSW)、スクールカウンセラー(SC)などが連携を強化し、チームで支援する体制の構築などを盛り込んだ。 1人1台の端末(タブレット)を活用し、児童生徒が毎日心身の調子を記録する「心の健康観察」も実施し、不安や悩みの早期発見・早期対応を図る。心の健康観察は25年2月から7月にかけて、指定のモデル校を決めて実証。同年9月以降に市内全校に取り組みを広げたい考えだ。 市教委担当者は「不登校を重く考えがちだが、最終目標は社会的自立。子どもたちの悩みや思いを知ることで、早期の発見・対応を目指したい」と話した。 不登校の児童生徒には長期的な見守りが欠かせない。適切な支援を行うには、家庭と学校、行政、専門機関をつなぐSSWや、学校で児童生徒らのカウンセリングを行うSCといった専門職と密に連携することが重要だ。 同市名瀬の奄美川商ホールで20日にあった24年度第2回奄美市生徒指導主任等連絡協議会では、同市のSSWを招いた意見・情報交換会が行われた。市内の小中高校の教諭など35人が出席した。 会合では、市SSW総括コーディネーターの福山八代美さんら4人のSSWが登壇。不登校に限らず、さまざまな不安や悩みを抱える児童生徒やその家族と向き合ってきた事例を紹介し「ぜひSSWを活用して」と呼び掛けた。意見交換では、SSWと教諭らが気になる児童生徒の様子などについて相談し対応を話し合った。 24年度同協議会の会長を務める名瀬中の木場敏朗校長は「SSWと先生たちが思いを共有してお互いを知るきっかけにしてほしい。担任が抱え込むのではなく、初期段階から(専門職を)活用してもらいたい。足並みをそろえて行動連携をすることで、困り感のある子どもたちや家庭の助けになれば」と語った。