J通算出場200試合を超える2人のベテランが見せた「気持ち」がこもったゴール
発する言葉より、プレーそのものが強烈なメッセージ性を帯びていた。技術もさることながら、何より「気持ち」がこもった2発のゴールを見た。 5月19日のJ1磐田ー浦和戦。先制を許したジュビロは後半26分、MF金子翔太(29)の味方シュートの軌道を変えるワンタッチ弾で貴重な勝ち点1を挙げた。金子にとってリーグ戦のピッチに立つのは2月24日の開幕・神戸戦以来、実に14試合ぶり。「(出番がなく)本当につらかった」というのは偽らざる本音だったと思う。 その1週間後、今度はオレンジ軍団のベテランが見せてくれた。同26日のJ2清水―水戸戦。直近7試合ベンチ外となっていた清水・MF白崎凌兵(31)が後半8分、頭で決勝ゴールをねじ込んだ。「本当に色んな葛藤があった」という言葉にも偽りのない感情がにじんでいた。 J通算出場が200試合を超え、ほぼ毎年のように30試合前後の出場機会を確保してきた両者だが、今季は共に出番に恵まれているとは言えない状況だ。金子の先発は0。昨季、秋葉監督から「全権」を与えられていた白崎もスタメンは5試合にとどまる。 「試合に出る」ことは決して当たり前ではなくなった。白崎は言う。「最初は正直納得いかない部分もあった」。金子も「気付いたらメンバー外の練習で自分が一番年上になってた」と苦笑する。 2人が腐っていたら、おそらくゴールどころか出番すら回ってこなかっただろう。金子は黙々と居残りを重ねてシュートを磨き、白崎はサブ組の司令塔として主力組を下して手本になった。「自分の振る舞いを見て若手が何を感じるか」を意識していたからこそ、訪れたチャンスで主役を勝ち取れた。金子は「サッカーの神様っているんだな」と言い、白崎も「頑張っていればいいことあるんだな」とつぶやいた。 16位の磐田はJ1残留へ、首位の清水はJ2優勝へ、まだ道半ば。この先も両ベテランが輝く場面が来ると信じている。(静岡支局Jリーグ担当=武藤 瑞基)
報知新聞社