藤原ヒロシが語る新店「V.A.」と「タイムラグの面白さ」 「僕は未来にほしいものを買う」
――さまざまなアーカイブに簡単にアクセスできるようになったことで、クリエイティブにはどんな影響が出ていると思いますか?
藤原:安易なコピーとパクリが増えましたよね。しかも直近の流行をネタ元にして。僕らも散々サンプリングはしましたけど、やるからには真剣かつ緻密に、リスペクトを込めてコピーしてましたよ。
――まさにパクリとオマージュの違いですね。
藤原:それと、あえてネタ元を明かさないことによって生まれる、奥行きを楽しむようなことがなくなってしまったかな。日本の国民性みたいなことも関係しているのかもしれないけど、最初にネタバラシをしてから提供するようなところがあるでしょう。これは今に始まったことではなく、日本の翻訳を見てもその傾向は明らかで。アンデルセンの名作「裸の王様」って、英題は「The Emperor's New Clothes」なんですよ。「王様の新しい服」としか言っていないのと、タイトルで「裸」であるとネタバラシするのとでは、奥行きが全然違う。
――90年代リバイバルやY2Kと呼ばれる流行については?
藤原:僕らにとってのリバイバルと、今の若者にとってのリバイバルは、かなり様相が違うと思いますね。僕らの時代のリバイバルは、廃れて完全に消えてしまった過去のものを、苦労して探しまくって、ようやく手に入れていたけど、今のリバイバルはそういうことではないでしょう。いつでもアーカイブにアクセスできることで、「廃れる」という感覚もだいぶ薄くなった。あとは、分かりやすくメジャーなものがあったからこそ、そことは違うものを選ぶことで遊べていたのに、もはや大メジャーが存在しなくなって、ズラす楽しみは減ってしまったような気がしますね。
街は時代ごとに変わっていくことが必然
――現在進行形で再開発が進む原宿という街は、どう見ていますか。
藤原:以前は仕事場もあってよく来ていたのですが、最近は来ることも減りましたね。とはいえ、原宿という街の魅力は今も変わらないと思います。トレンドとかの話の前に、まずは立地ですよね。象徴として明治神宮があり、巨大な代々木公園があり、そこから真っ直ぐに竹下通りと表参道がそれぞれ別の方向に延びている。そのランドスケープがおもしろい。