患者らから暴力・暴言「ペイシェントハラスメント」が深刻化…医療現場で指針作り広がる
医療従事者が患者やその家族から暴言や理不尽な要求などを受ける「ペイシェント(患者)ハラスメント」(ペイハラ)の防止に向け、医療現場などで対応方法をまとめた指針をつくる動きが広がっている。看護師が体を触られるなどのケースもあり、専門家は、悪質な場合は警察と連携した対応が必要と指摘している。 【図表】医師や看護師に対する主なペイハラの例
体触られる
551の病床を備える京都桂病院(京都市西京区)では昨年10月、患者らによるハラスメントへの対応指針を策定し、ホームページに掲載した。「診療は『患者と医療者の信頼関係』が前提で成り立つ」と明記し、被害に遭った場合は警察や弁護士に連絡するとしている。
看護師らが患者に「殺すぞ」と脅されたり、体を触られたりする被害が目立っているためで、警察に通報しようとすると「患者を脅すのか」と反発されたこともあるという。
同病院は入り口に「迷惑行為により診療をお断りする場合があります」と書いた紙を掲示したほか、看護師らがペイハラ対策を学ぶ講習会も続けている。
安全管理を担当する職員は「ハラスメントを受けたショックで仕事が手につかなくなる職員もいるので、安心して働けるように病院として守る必要がある」と話す。
指導の拒否も
医療従事者に対する患者の暴力や暴言のほか、医療行為への執拗(しつよう)な批判や指示、指導の拒否は、医療関係者らの間でペイハラと呼ばれる。医師法で「医師は診療を求められた場合、正当な理由がなければ拒んではならない」と「応招義務」を定めており、ペイハラ被害を打ち明けにくい面がある。
労働安全衛生総合研究所の2023年の調査では、医療・福祉分野の従事者で、過去1年間に顧客からハラスメントを受けたと回答した人の割合は4・6%で、全就業者平均(3・3%)より1・3ポイント高かった。
全国在宅療養支援医協会が22年に行った調査では、患者や家族とのトラブルで身の危険を感じた経験がある訪問診療医は4割近くに上った。
「組織的対応を」
20年6月施行の改正労働施策総合推進法に伴う指針で、医療機関にもハラスメント防止対策として患者らの迷惑行為への対応が求められるようになった。厚生労働省は、医療現場での暴力・ハラスメント対策について学べる動画を公開している。