任天堂が「異端の経営者」を抜擢した納得の理由 日本企業と北米企業との「文化のミスマッチ」
■レンガ型組織と石垣型組織 アメリカの企業は「レンガ型組織」と言われ、マーケターはマーケター、ゲームデザイナーはゲームデザイナーとして、職種の中にピラミッド構図があり、昇進していきます。それぞれの職種にプロトコルがあり、何を学ばせればいいのかもわかっています。 きちんとモニタリングしており、ディレクターの下にマネジャーが、その下にエンジニアがいて、きちんと仕事をしていないとすぐにバレてしまいます。査定も厳しく、パフォーマンス次第でUp or Outと言われる文化もあります。
一方、日本は「石垣型組織」と言われます。「現場でやっているうちに学べるだろう」という感覚で、社内を移動させながら、いろんなことを経験させる。その結果としてゼネラリスト型に人が育ちます。本人さえ良ければ、ポジションにかかわらず何でもできるという良さがありますから、スタープレーヤーも生まれやすい。 日本の組織は、ゆるくて家族的です。石垣の大きさはまちまちで、何でもできる人がいる一方で、本気を出していない、何もしなくてもそこにいられる人が半数以上いても成り立ちます。
僕は、会社トップでありながら、事業開発もゲームデザインもやりました。ところが、アメリカでこれをやると怒られます。レンガ型組織では、他人の仕事領域に入ることは越権行為になるのです。たとえ上から下に対してでも。 自動車もパソコンも、海外式の「レンガ型・モジュラー型」、つまりAとBとCのパーツを組み合わせるという作り方になりましたが、ゲームも同じで、海外では同じ方式で作らなければなりません。 マーケター、シニアデザイナー、ジュニアデザイナー、全員がパーツの組み合わせです。それなりの人が入ってくるのですが、みんな大体40点~80点ぐらいのレベルで、最初は、作り方や言語の違いなどがあって、共通のものを見つけるまでの大変さがあります。
ただ、パーツがそろってしまえば、それぞれの領域での作業になりますから、とても強い。映画でもゲームでも、大規模なものを作るとなるとアメリカには勝てないなと感じさせられます。 日本の場合は、「石垣型・すり合わせ型」です。属性も、何ができるのかもわからないけれど、「20年やっているから社内のことは何でもわかっている」というような人が多く、150点ぐらいの人がたまにいて、その周りに30点ぐらいの人がたくさん集まり、真っ黒なスイミーのまわりの赤い魚たちようにダイナミックに動くのです。