グローバルの租税改革で企業の負担増 生成AI活用で法人税のインパクトを予測する取り組み
法人税の開示
これに続きFASBの承認した新しい基準では、企業により包括的な法人税の開示を求めており、例えば州レベル、および連邦レベルで支払った法人税や外国所得税の支払いを年次財務報告書に盛り込まなければならない。ちなみに現在は、現金で支払った税金総額や、実効税率、税制上の優遇や経費のみの開示要求だ。 この新基準は2016年に初提案されたものの、投資家を困惑させる、といった理由や企業の機密が漏洩するなどと業界が抵抗していた。ここへ来て、承認へと進んだのは投資家からの声が大きかったからとFASBは言及している。この新基準は今年中に調整が終わり、公的企業には2025年、私企業には2026年から適用される予定だ。
複雑化する業務をサポートする生成AI
こうした動きの中で発表されたのがKPMGとMicrosoftが共同開発した生成AIを活用するプラットフォームだ。このソリューションはAzure Open AI Serviceを用いたクラウドベースで、データラングリングをし、企業がFASBやOECDの新しい基準や、ステークホルダーの要求に対応できるというもの。 税務関連の大量のデータを組織全体から迅速かつ効率的に収集し分析、インタラクティブで使い勝手の良いダッシュボードに表示できることが売りだ。 企業が税務ESGに関するナラティブを正確に伝えることができるかどうか、にも注目が集まっている。というのも、最近同社が実施した500人のCスイートを対象にした調査では、この経営幹部のうち自社の税務ストーリーを公に伝える準備ができているのは、わずか10%のみであったことが判明。その理由として、事業を展開する世界各国でさまざまな状況がある中、すべての国々から必要なデータを収集することが困難、データを収集し比較するテクノロジーがない、データを読み解くスキルのある人材不足、データを収集し比較する人材が足りない、といった理由を挙げている。 企業はImpact Analyzerの自動データ抽出・整理機能を使うことによって、開示に必要な大量のデータを解析することが可能になり、コンプライアンスプロセスが簡素化され、評判の悪化や納税者と当局の紛争、国民の不信感のリスクを最終的に軽減することが可能となる。