【脳とコンピュータを接続した男】”念じるだけ”でパソコンが操作できる…!人類史上初「ニューラリンク」被験者第1号に会いに行ってみた!
脳に1024本の電極を縫い付けた
「友人から教えられるまで、ニューラリンクのことはまったく知りませんでした。臨床試験の被験者を募集しているというので応募したら、数ヵ月後には私がその第1号になっていました。新しいテクノロジーの被験者となることには恐怖感もありましたが、私に続く人たちの役に立てるならと挑戦することを決意しました」 そう語る彼の頭には、ワイヤレスで送受信や充電が可能なクォーターコインサイズ(直径約25ミリ)のチップが埋め込まれている。その施術は手術ロボットで行い、頭蓋骨に穴を開け、そのから脳の表面に髪の毛よりも細い電極を1024本縫い付け、ジャストサイズのデバイスで穴を塞ぐというものだ。 ニューラリンクが手術ロボットにこだわる理由は、脳の血管を避けて微細な電極を縫い付ける作業が人間には難しいことと、将来的には誰にでも利用可能なテクノロジーとして広く普及させることを目論んでいるからだ。 「全身麻酔で眠っているうちに2時間もかからず手術は終わりました。意識が戻ると、ニューラリンクのエンジニアがデバイスからの脳波信号をモニターして見せてくれました。麻痺した右手を動かそうと頭の中で思うと確かに脳波は反応し、それをカーソルと連動させることで、右手を動かすようにパソコンを操れるようになったのです。障害を持った者にとって、それは超能力を得たような衝撃的な体験でした」 興奮気味に語るアーボーは、陽気でおしゃべり、ジョーク好きな現代的な若者である。 四肢麻痺した身体を支えるための電動式の重厚な車椅子は、首の向きを変えたり、口元のチューブから息を吹き込むことで自分で操縦ができるが、あらゆることに家族の介助を必要とした。考えるだけでパソコンを操作できるようになった結果、大きく変わったというアーボーの日常生活とは――。 つづく後編記事『脳とパソコンを接続した米国人男性「驚きの日常生活」…ニューラリンクによって人生が激変していた!』では、メッセージ送信や外国語学習のようす、さらにはチェス大会出場のため海外旅行に赴いた際のエピソードについて、詳報します。
ケロッピー前田(ジャーナリスト)