鉄道旅行でまさかのロストバゲージ?荷物車に預けたスーツケースが別物に… かつては衝突事故も、カナディアン乗車記⑤完 「鉄道なにコレ!?」【第61回】
ところが、いざ到着すると運搬用のベルトが既に停止していた。 私が出遅れたのにはこんな理由があった。カナディアンが定刻より約1時間20分早い午前6時40分ごろにバンクーバーに到着。ただ、食堂車では予定通り朝食を振る舞っていたため、オムレツを注文した。「8時15分までに列車を降りてください」と車内放送が流れたため、個室寝台に戻って荷物を整えると8時過ぎに列車を降りた。 ▽出てきたスーツケースに違和感、一回り大きくてやけに重い 駅のVIA鉄道の窓口へ行き、「スーツケースを受け取りに来ました」とトロントで預けた際に受け取った引換券を渡した。男性係員は「少しお待ちください」と言うとカウンターの奥を確認し、キャスター付きの黒いスーツケースを引っ張り出した。 確かに預けたのと同じような黒色だが、一回り大きく見える。持ち手を握って引いてみるとやけに重い。違和感を抱いてスーツケースを眺めると、付けられた名札に見慣れない氏名と電話番号が記されていた。
慌てて窓口に戻ると、係員は「あなたの引換券の番号が、このかばんに付けていたタグと1番違いなので見間違えました」と釈明。「残っていたのはこのかばんだけなので、持ち主があなたのかばんを間違えて持って行った可能性があります」と話し、かばんの名札に記されていた電話番号に早速連絡してくれた。 ▽アメリカに帰るまでの2日間で見つかれば… しかし、電話への応答はないという。「旅行を手配した企業に持ち主に連絡してもらっていますので、もう少しお待ちください」と話す係員に、私は二つのことを伝えた。 一つは荷物を預けた証拠が必要だと考えたため、引換券を返してくれるように頼んだ。さらに私の氏名と携帯電話の番号を記入した紙を渡し、「私はバンクーバーに2日間滞在しますので、それまでに見つかれば取りに来ます」と伝えた。 「その後は駐在しているアメリカに戻ってしまうのですが…」と話を続けると、係員は「いや、かばんはもう近くにあるかもしれませんよ」と駅の入り口を指さした。そこには60代と見られる男性が、見覚えのある黒いスーツケースを引いていた。