鉄道旅行でまさかのロストバゲージ?荷物車に預けたスーツケースが別物に… かつては衝突事故も、カナディアン乗車記⑤完 「鉄道なにコレ!?」【第61回】
男性は窓口に着くと、開口一番に「戻るのにかかった(自動車のライドシェアサービス)ウーバーの代金50ドルを払ってもらおうか」と言った。だが、次の瞬間に相好を崩して「冗談だよ」と付け加えた。 男性は私の方を向くと「これは君のかばんだね。迎えに来た娘が手荷物回転台で間違えて持ってきてしまったんだ。すまなかった」と語った。私は「駅で待っていただけなので気にしないでください。どうぞ良い冬休みを!」と返し、男性も「君もな」と言い残して駅を出て行った。 私は係員の方を向くと「これで一件落着です。ありがとうございました。良いクリスマスをお過ごしください!」と謝意を伝えた。係員は胸をなで下ろして笑みを浮かべた。 ▽「素晴らしいスタッフに魅了された」リピーターも かくして4泊5日のカナディアンを完全乗車したが、素晴らしい旅行だったため疲労感は全くなかった。カナディアンロッキーの大自然といった美しい車窓や、1954年の登場から今年で「古希」の昔ながらの寝台車を体験できた価値はもちろん大きかった。
それにも増して感動したのはVIA鉄道の客室乗務員と駅係員が利用者に明るく接し、心配りを欠かさず、責任感を持って職務を遂行するプロの仕事ぶりだった。 そんな姿勢は私が切符を手配した際に手伝ってくれたスタッフにはじまり、高級レストランも顔負けのおいしい料理を調理してくれる料理人、清潔な食卓にタイムリーに運んでくれるウェイターとウェイトレス、クラフトビールの試飲会といったカナダの魅力を一生懸命に発信したり、客室のベッドメーキングをしてくれたりした乗務員、預け入れ荷物が見つからない時に必死に対応してくれた係員ら全員に共通していた。 こうした「人財」と呼ぶのにふさわしい優れたスタッフが豊富なのが原動力となり、レジェの2023年のカナダ企業評価ランキングの運輸部門でVIA鉄道は首位に輝いたのだろう。カナディアンの車内でも「素晴らしいスタッフに魅了されて何度も乗っているよ」と話すリピーターと出会った。
次のVIA鉄道の車内ではどのような素晴らしい出会いがあるのだろうかと、今から楽しみにしている。 ※「鉄道なにコレ!?」とは:鉄道と旅行が好きで、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の執筆者でもある筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、ほぼ月に1回お届けしています。ぜひご愛読ください!