鉄道旅行でまさかのロストバゲージ?荷物車に預けたスーツケースが別物に… かつては衝突事故も、カナディアン乗車記⑤完 「鉄道なにコレ!?」【第61回】
2023年12月にカナダ最大都市の東部オンタリオ州トロントと西部ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの約4466キロを駆け抜けるVIA鉄道カナダの看板列車「カナディアン」の寝台車に乗った。4泊5日という日程ながら、素晴らしい景色や料理、乗務員らの心配りで疲労感は全く感じなかった。到着したバンクーバーの駅では荷物車に預けたのとは「別物」のスーツケースを渡され、「ロストバゲージか」とやや焦ったものの係員は必死に対応してくれた。先導するディーゼル機関車に搭載した安全装置は、23人が亡くなった1986年の衝突事故の教訓が生かされているという。(共同通信=大塚圭一郎) 「空気を運んでいる」ローカル線は存続?廃止?
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 【F40PHシリーズ】アメリカの大手自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)の機関車部門だったEMD(現在はアメリカ建設機械大手キャタピラーの部門)などが製造したディーゼル機関車。足回りは2軸台車を2基備えている。1975~98年に500両超が製造され、全米鉄道旅客公社(アムトラック)などの北米の鉄道会社が導入した。現在も運行しているVIA鉄道カナダは、87~89年に造られた「F40PH―2」を53両保有している。これらの機関車は最大出力が3千馬力のディーゼルエンジンを搭載しており、設計上の最高時速は145~153キロ。 ▽機関士の居眠り?が教訓「安全運行のために労務管理は厳格に」 私が2023年の冬休みに息子とともに「寝台車プラスクラス」の2人用個室寝台を予約してトロント・ユニオン駅からバンクーバー・パシフィック・セントラル駅までの全区間乗ったカナディアンは、架線がない非電化区間を走る。先導したのは2両のディーゼル機関車「F40PH―2」で、計14両の客車や食堂車、荷物車を引いた。
客室乗務員のエミリー・ファラージさんはイベントに使う中間車「スカイラインドームカー」(本連載第60回参照)で開いたVIA鉄道のレクチャーで「2人の機関士が乗務し、12時間おきに交代しています。安全運行のために労務管理は厳格にしています」と強調。教訓を残した事例として1986年2月8日午前8時40分ごろにヒントンで起きた衝突事故を紹介した。 この事故はカナディアン・ナショナル鉄道(CN)の118両編成の貨物列車が停止すべき位置を通り過ぎ、単線区間でVIA鉄道カナダの14両編成の大陸横断列車「スーパーコンチネンタル」(現在は廃止)と衝突して計23人が亡くなった。 ファラージさんは貨物列車が所定の位置で停止しなかった原因として「機関士の居眠り運転だったとの見方があります」と指摘。「当時の機関車の運転席にも居眠り運転などを防ぐための安全装置があったものの、機能していなかったのです」として説明を続けた。