大きく行動しなければ自分を変えられないと思っていた――鞘師里保がニューヨークで過ごした日々 #今つらいあなたへ
モーニング娘。の元メンバーであり、歌手であり、ニューヨーク留学も経験したダンサーでもある鞘師里保(26)。しかし、今年目立ったのはなんといっても俳優としての活躍だ。そして、今に至るまでには、10代のはじめから芸能界に身を置き、とことん心を折られた日々があった。本気で転職を考えたこともある。それでもふたたびこの世界に希望を見いだすことができたのは、なぜなのだろうか。(取材・文:山野井春絵/撮影:堀内彩香/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
自分の心と体力が追いつかなくて挫折した
俳優は、オリジナルキャラクターのイメージが強い人と、役柄ごとに変化するカメレオン系とに分かれるが、鞘師里保は間違いなく後者だろう。歌手、ダンサーという華やかなキャリアがありながら、俳優となれば、完璧に役柄に擬態してみせる。この夏、鞘師が舞台『らんぼうものめ』で演じたのは8歳の少年役だった。一方、映画『十一人の賊軍』では、火付けで捕まる女郎役。「ぶっ殺してやるっ!」という激しいセリフも板についている。本当に同じ役者だろうかと、目を疑った。 「時代劇の所作をおぼえるために日本舞踊のレッスンを受けたのですが、なかなか苦労しました。私がやってきたストリート系のダンスは、基本はありつつ、いかに自分の表現を見せられるかという部分が大きい。日本舞踊はバレエに近い感じで、型を美しく見せることが重要。その先に、その人らしさが出てくるんだと思うんですけど、その基本の型に収まることに、はじめはすごくむずがゆさがあって。繰り返し教わることで、たとえば配膳するときの着物のさばき方だとか、知らなかったらきっと手持ちぶさたになりそうな部分も、スッとできるようになったのは収穫でした」
台本を読み込み、想像力を働かせながら、『十一人の賊軍』で演じた「なつ」という女性の人物像を膨らませていった。 「なつは優しい人で、愛情を受けて育つことができなかったからこそ、不器用に人を愛して裏切られてしまう。それでも『賊』たちと一緒に過ごすうちに、優しさの片鱗が見え隠れして。人を愛するということが、彼女のテーマなんだろうな、と」 そんな役柄に共感するところがたくさんあった、と鞘師は言う。 「自分も仕事の中で、『これだ』と思って突き進んでいったけど、自分の心と体力が追いつかなくて挫折した時期がありました。そういう経験を、なつが愛を裏切られたところと重ね合わせたりして、役柄に近づく作業をしていきました」