マンションの修繕積立金は10倍増額されるケースも! 資金不足で劣化リスクを抱える建物が増えている
管理組合は機能しないことを前提に「均等積立方式」に変更する
修繕積立金の増額は、管理組合による決議を経る必要がある。しかし、修繕積立金の不足を問題視する以前に、多くの分譲マンションでは管理組合が機能不全を起こしている。 管理に関しては管理会社に全面委託しているケースが多く、残念ながらほとんどの区分所有者は管理組合の活動に対し"厄介事を押しつけられた"程度の認識しか持てない。 そのため、管理組合の役員のなり手すら不足し、管理費や修繕積立金の資産チェックの業務を放置せざるを得ないケースも多いのである。 すべての管理組合がそうとは言えないが、職業や年齢、ライフスタイルも異なる人たちがマンションという現代の長屋に集っているだけに過ぎず、簡単に合意形成がはかれるとは考えにくい。近年では外国人の購入が増えたことで、ますます合意形成は難しいといわれる。 実際、修繕積立金の増額に関しても意見は分かれ、合意形成できずにトラブルになるケースが増えているといわれる。 そのため、分譲時に初期の負担が小さい段階的増額方式のマンションでは、早い段階で積立金額の見直しや積立方式を変更しておきたい。 とはいえ、管理組合が機能していない場合、積み立て金額の変更や積立方式の変更を提案しても合意形成がはかれずに、やがて資金不足になることは明らかだろう。 そのため、国土交通省では安定的な積立による修繕工事費用を確保できる「均等積立方式」を推奨しているというわけだ。管理組合が機能していないマンションこそ均等積立方式に切り替えて、修繕積立金を増額しておくべきだ。 そうしなければ、必要な大規模修繕工事が実施できず、マンションの資産価値は下がる一方で、やがて売却すらできない負の資産になりかねない。
修繕積立金の設定額の目安は?
国土交通省では、修繕積立金の設定目安に関して試算する方法も示している。 計算方法の詳細は省くが、下表の通り、20階未満の中高層マンションか20階以上の超高層マンション(タワーマンション)かによって計算方法が変わる。 例えば、20階未満で建築延べ床面積が5,000㎡であれば、平均月額335円/㎡・月になっているため、専有面積80㎡のマンションであれば [335×80=26,800円/月] が修繕積立金の目安となる。 20階以上のタワーマンションでは、平均月額338円/㎡・月になっているため、専有面積80㎡のマンションであれば [338×80=27,040円/月] が修繕積立金の目安となる。 ただし、この試算の平均値に関しては366事例のマンションのデータから導いた目安なので、この金額を積み立てれば修繕積立金の不足を回避できるとは限らない。