マンションの修繕積立金は10倍増額されるケースも! 資金不足で劣化リスクを抱える建物が増えている
修繕積立金の積立方式を見直そう
修繕積立金の値上げは、管理組合の総会で変更決議が必要になり、簡単には値上げできない。 しかし、多くの分譲マンションは、デベロッパーが修繕積立金を低く抑えて売り出している場合がほとんどで、新築なら数千円程度になっていることも少なくない。これがやがて修繕積立金不足を引き起こす原因でもある。 では、修繕積立金をどう増やしていくのがいいか。修繕積立金の積立方式は大きく分けて「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2つがある。 均等積立方式とは 毎月の修繕積立金を一定額にし、積み立てる方式が「均等積立方式」で、以下のメリット・デメリットがある。 メリット:定額負担として設定するため、安定的な修繕積立金を確保できる デメリット:段階増額方式より多くの資金管理が必要。長期修繕計画の見直しで更に増額が必要な場合もある 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、例えば、築後30年間に必要な修繕工事費を戸当たり522万円としたときに、30年間均等に積立金を確保するには月額14,500円/戸(年額174,000円/戸)に設定しておく必要がある(下のグラフ参照)。 築後30年間に必要な修繕工事費は机上の計算のため、実際には老朽化の進捗とそのマンションで優先すべき修繕工事を見極めて、その都度、修繕工事の見積りを取る必要がある。 段階増額積立方式とは マンションによっては、分譲時に「段階増額積立方式」にしている場合もある。段階増額積立方式とは、当初の修繕積立金を低く抑え、例えば5年サイクルで修繕積立金を段階的に増額改定していく方式になる。メリット・デメリットは以下の通りだ。 メリット:修繕資金のニーズに応じて積立金を徴収するため、当初の負担額は小さい デメリット:将来の負担増を前提とするため、増額しようとする際に区分所有者の合意を得にくい 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、例えば、築後30年間に必要な修繕工事の戸当たりの総額が522万円とすれば、購入時に修繕積立基金として36万円徴収し、初年度の修繕積立金を月額6,000円/戸(年額72,000円/戸)とする。 そして、5年置きに月額3,000円/戸ずつ段階的に値上げしていき、築26年~30年目には、月額21,000円/戸(年額252,000円/戸)まで増額して必要な修繕工事費用を確保しようという方式である。 修繕工事積立金が不足するような徴収方式はいち早く改善する必要がある では、どちらの積立方式がいいのだろうか? これは各人の居住スタイルによっても最善の方法は変わってくる。 例えば、新築から10年程度で、売却・転居を想定しているのであれば、当初の修繕積立金が低い「段階的増額積立方式」のほうが負担が小さくなるため、メリットがある。 しかし、永住するつもりで購入・居住しているのであれば、年金暮らしになったあとも積立金が一定の負担で済む「均等積立方式」が安心だろう。 いずれにしても、紹介した事例は築後30年間の修繕工事総額を設定したうえでの戸当たりの積立額を算出したもので、各マンションによって築後30年間の修繕工事代金の総額はそれぞれ違う。 そのため、例えば築20年のマンションの修繕積立金を戸当たり月額いくらにすればいいのかは簡単に算出できない。立地や階数、付属設備や構造によって修繕工事代金も変わるからだ。 修繕工事積立金が不足するような徴収方式はいち早く改善する必要があるが、急激な増額によって区分所有者が支払えなくなれば元も子もない。国土交通省によると、計画当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍で、10倍を超えるケースもあるという。 そこで、国土交通省が修繕積立金の増額幅の目安を示そうとしているのである。 確かに、修繕積立金が月額6,000円/戸のマンションで、例えば、修繕積立金を月額3万円/戸と5倍に増額すれば修繕工事資金は潤沢になるかもしれないが、滞納者が増えるリスクは大きくなる。そうなれば、修繕積立金を増額した意味がなくなる。 なお、均等積立方式だからといって資金不足にならないとは限らないことは留意しておきたい。