マンションの修繕積立金は10倍増額されるケースも! 資金不足で劣化リスクを抱える建物が増えている
全国の分譲マンションでは「修繕積立金」が不足し、老朽化しても資金不足で適切な修繕工事ができないリスクが高まっている。不足の要因として、積み立て途中の負担金の過度な増額にあるとされており、国土交通省はその対策として、増額幅の目安を示すことを検討するという報道があった。(フリージャーナリスト:福崎剛) こんなハズじゃなかった…! マンション購入後の後悔3選 目次修繕積立金が不足するマンションのリスクとは国土交通省が修繕積立金の値上げ幅の目安を示す問題点は修繕積立金の「積立方式」にある管理組合は機能しないことを前提に「均等積立方式」に変更する修繕積立金の設定額の目安は?
修繕積立金が不足するマンションのリスクとは
分譲マンションでは、建物の維持管理のための修繕積立金を設定している。その修繕積立金が不足して、健全な建物の維持管理ができない劣化マンションが増加するリスクが高まっており、社会問題となりつつある。 築40年以上のマンションは2022年時点で125万戸を超え、2032年までに250万戸を超えると予想される。こうした築年数を重ねたマンションは、安全で快適に住まうために建物の維持管理が必要で、長期修繕計画に基づいて修繕工事を実施する必要がある。 ところが、修繕工事のための資金が不足しているマンションが増えている。修繕工事ができなくなれば老朽化は加速し、最悪の場合は居住できないほど劣化するリスクもある。
国土交通省が修繕積立金の値上げ幅の目安を示す
修繕工事のための資金が不足している要因として、修繕資金の積み立て途中の増額幅が大きすぎるため、支払い困難に陥ってしまったり、そもそも値上げのために必要な住民の合意が得られないことにある。 そこで、国土交通省が修繕積立金の値上げ幅の目安を示すとともに、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」などにも負担金の目安を盛り込むことを検討し、2024年の夏までに対策をまとめるという報道があった。ここで簡単に解説してみよう。 修繕積立金の不足のトラブルが最初に起きるのは、新築から15年前後の「大規模修繕工事」を前にした頃である。 大規模修繕工事には、建物の防水や壁、廊下、外構の補修のほか、設備機器の交換も含まれる場合もあり、建物の規模や設備内容によって工事費も大きく異なる。 国土交通省の「マンション総合調査(平成30年度)」によると、長期修繕計画修繕積立金の状況について「不足していない:33.8%」「不足している:34.8%」「不明:31.4%」との回答があり、およそマンションの35%が修繕積立金の残高が不足していると認識している。 しかし、これはすでに作成された長期修繕計画に対しての話であり、実際に修繕工事をする場合は、資材や人件費の高騰を考慮すれば、必要な修繕費との間に大きな開きが出ることは必至。長期修繕計画は机上の計画であり、個々のマンションに必要な修繕内容が異なるのだ。 実際に修繕積立金がいくら必要なのかは明示しにくいが、多くのマンションで当初に設定されていた修繕積立金の金額では不足するとされている。 そのため、以下の3つから不足分を補う方法を選び、修繕工事を行うことになるのである。 (1)「段階的に値上げ」をする (2)修繕工事のタイミングで各戸から「一時金徴収」をする (3)修繕積立金の不足分を金融機関から「管理組合で借入金をする」を選び、修繕工事を行う