「ビジョン」を生み出すためには「痛みを知れ」…起業のアイデアを深めるために”必ず”すべきこと
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第21回 『“マネジメントの父”ドラッカーに師事した起業家教育のプロが教える、「夢を叶える」ために「今」すべきこと』より続く
ビジョンって何?
そもそも、ビジョンって何だ? そんな夢、ビジョンなんて、思い浮かばないという人もいるかもしれません。しかし、自分ごととして考えてみれば、そんなことはないはずです。 よく新聞に掲載されている健康食品の広告では「実母が体調不良で悩んでいるのを見て、なんとかしてあげたいと思った」と商品開発の経緯をうたっています。ある電動車いすの開発者は、年を取って、車いすを動かす手の力が衰えた方の「もう出かけられない」という声が耳から離れなかったそうです。 グーグルのラリー・ペイジは、自分自身がネット検索をしているとき、欲しい情報になかなか行き当たらない、まったく関係ないページが検索上位に表示されていることを嘆き、「自分以外にも同じ不満を持っている人はたくさんいるんじゃないか」と考えました。
「不平」「不満」から得られるアイデア
世の中には、いまもたくさんの「不平」「不満」「不便」「不自由」があります。その中には、ふだんは気づかず、見過ごしているものもたくさんあるはずです。 たとえば、この数年で大きく話題になった「子ども食堂」です。地域に根ざして、子どもたちに食事を提供するサービスですが、この提唱者は、「孤食」という問題に気がつきました。核家族、鍵っ子という現象は昭和の時代から話題に上っていました。両親と子どもの3人家族、両親は共働き。いまでは当たり前の光景です。 その対策として、放課後教室という、放課後に子どもたちを預かるサービスもあります。しかし「食」の問題は手つかずだった。家に帰ってレンジでチン。それを一人で食べる。「孤食」です。ここには、寂しい、かわいそうだという以上の問題が内包されています。 コミュニケーションが取れない、栄養が偏りがち、食べる量が多くなる、あるいは少なくなる、基本的な食事マナーが身につかないなど、子どもの成長にまつわる多くの課題が指摘されていたのです。 そこで、「子ども食堂」で食事を提供し、集まって食べてもらう。残念ながら、コロナ禍で活動を自粛していた団体もありましたが、日本中で子ども食堂が運営されるようになっています。 もっともっと身近なお話。ショッピングモールをはじめとする数多くの商業施設や駅、公共施設でこの10年で大きく様変わりしたものがあります。 トイレです。子ども向けのトイレ、小さな子を連れた親向けのトイレ、授乳室を併設したものなど、工夫されたトイレが増えています。また、人工肛門・人工膀胱を使っているオストメイトの方向けトイレ、車いすの方が使える多用途トイレの設置も当たり前になっています。