「ビジョン」を生み出すためには「痛みを知れ」…起業のアイデアを深めるために”必ず”すべきこと
「痛み」を知り、解決する
これらのケースで解決したかった問題に共通するのは、当事者の「痛み」です。肉体的な痛みのみならず、むしろ感情的な心の痛み。自覚できる痛みだけではありません。ちくちくと心にささくれがある状態。しかも、「それでしょうがない」と諦めているような、小さいけれど、無視できない痛み。 ---------- 車いすを使っているんだから、不便で当然。 人工肛門だから、苦労して当たり前。 両親が共働きだから、食事は一人で取るしかない。 ---------- これは当たり前なのかどうか。問題の核には「痛み」があるのです。これを見つけられる、共感できる人が、ビジョンを生むと思っています。 先日、(株)リクルート主催の高校生Ring Award(全国123校2万5000人を超える応募者の中から選ばれたファイナリストによるピッチ大会)に審査員として参加しました。「半径5メートルの身近な気づきが世界を変える」というテーマ、まさにこれです。 私はいつも学生に対して「社会への共感」「当事者意識」を持てと言っています。痛みを知り(共感)、その痛みを自分の痛みだと認識する(当事者意識を持つ)。 そして、その痛みを「解決する側」に立つ。不平不満の声に加勢するのではなく、身をもって行動する。傍観者にならない。Empathy(and compassion), not sympathy. これが共感と憐れみとの、大きな違いです。 誰しも最初は見つけられません。気がつきません。テレビで「世界で貧困に苦しむ、十分な学びを得る機会がない子どもがたくさんいる」と訴えられても、かわいそうだと思い、募金しようかなと思うだけ。 そこからもう一歩踏み込んで、「では、どうすればいいんだろう」「何をすればそれが解決できるんだろう」「自分だったら、どうしたいだろう」と自分ごとにしていく、それが共感力です。世界の貧困問題をなんとかしたい! の前に、僕の友達のジョニーはご飯を食べられない日がある、彼を救いたい! と考えるようになる人もいるでしょう。 そういった思いが、解決側に立ち、行動を起こすことにつながるのです。 他の人の痛みを想像し、共感し、自分の痛みとして感じることができる。 その痛みをなんとかしたい。どうすればいい? そこにビジョンが生まれるはず。だから、解決策が生まれ、それを実行することができる。 『「5人の変態を集めよ」…起業家教育のプロが語る、ビジネスにおいて仲間にすべき人の「特徴」』へ続く
山川 恭弘