三笘に窮地救われオマーンに1-0勝利で2位浮上も森保采配に残る疑問と不安
ドリブル突破という個の力を前面に押し出し、オマーン守備陣を大混乱に陥れた三笘が加わった効果を、前半が機能不全に陥った理由を交えながら伊東が振り返った。 「自分のところにけっこう人数をかけて止めに来ていたので、前半はちょっと難しくなっていた。後半に入って薫のところへサイドをチェンジしたら薫が1対1になって、そこで仕掛けたことでチャンスが生まれていた」 縦への群を抜くスピードで右サイドを制圧し、対戦相手を畏怖させてきた伊東を、オマーンは徹底的にマークする戦い方で日本を封じにきた。言い換えれば日本の左サイドは、特に前半に限ればオマーンにとって脅威ではなかった。 9月の初戦で敗れたオマーンとのリベンジマッチへ、森保一監督は敵地ハノイで1-0と辛勝したベトナム戦から先発を一人だけ入れ替えた陣容で臨んだ。予想通りだったと言うべきか。累積警告で出場停止となった守田英正(26・サンタ・クララ)が担うインサイドハーフには、森保監督が定める序列通りに柴崎が指名された。 オーストラリアとの第4戦から[4-2-3-1]に変わって採用された[4-3-3]システムで、守田は攻守両面における隠れたキーマンを担ってきた。 ウイングの南野拓実(26・リバプール)が中央寄りでプレーする左サイドには、必然的に大きなスペースが生じ、左サイドバックの長友佑都(35・FC東京)が高い位置を取ってカバーする形を取った。それでも埋め切れないスペースをインテンシティーの高い守備でカバーし、豊富な運動量を駆使して攻撃にも絡んだのが守田だった。 もっとも、柴崎の守備力は守田より大きく劣る。迎えたオマーン戦のインサイドハーフには右に柴崎が配置され、田中碧(23・フォルトゥナ・デュッセルドルフ)が守田の役割を託され、オーストラリア戦とベトナム戦で担った右から左へ回った。 田中の持ち味が失われがちになる展開になっても柴崎が優先され、南野がウイングのポジションから離れるプレーも認められた。ボールポゼッションで圧倒した前半は、その実はオマーンが形成する守備ブロックの外側を、例えるならばアルファベットの『U』を描くかのように、各駅停車で短いパスを回していたに過ぎなかった。 当然ながらオマーンのブロックをこじ開けようとする迫力も、ホームで苦杯をなめた借りを返そうという気概もなかなか伝わってこない。選手たちの胸中には秘められていたはずだが、バランスが著しく右に偏ったシステムが日本を沈黙させた。