「クスリを一度に40錠飲んだ。ふわふわして不安が消えた」オーバードーズの恐怖 若者がハマる背景に、孤独感や対人関係
「違法薬物とは異なり、市販薬などはドラッグストアやインターネットで比較的安価に購入できる。若者にとって、最も手を出しやすい薬物乱用の手段になっている」。市販薬や処方薬は「生きづらさを乗り越えたい」や「死にたい」といった、複雑なメンタルヘルスの問題が動機になっている場合が多い、というのが城田助教の分析だ。 厚生労働省も規制を強めている。2014年、医師の処方箋なしに購入できる一般用医薬品に使用される6成分について「乱用等のおそれのある医薬品」に指定し、2023年に範囲を拡大した。6成分を含む一般用医薬品には購入数に制限があるほか、販売する際は薬剤師らが氏名や年齢を確認する必要がある。 さらに、厚生労働省の検討会は昨年12月、依存性がある成分を含む市販薬の20歳未満への販売を「小容量の製品1個のみ」とする案を大筋で了承した。 それでも、城田助教によるとこれらの規制策には抜け道がある。
「現時点では複数の店舗をはしごしたり、インターネットを経由したりすれば、実際は制限なく購入できてしまう。(年齢制限を設けても)20歳以上が大容量の市販薬を購入し、それを20歳未満に譲渡する可能性もある」 実際、昨年11月には「トー横」と呼ばれる東京・歌舞伎町の若者に市販のせき止め薬を無許可で販売したとして、20代の男女4人が逮捕されている。 「規制を強化しても、非正規ルートで市販薬を取引したり、他の薬物や行為に移行したりする。オーバードーズはある意味、SOSのサイン。『ダメ。ゼッタイ。』と頭ごなしに否定するのではなく、教育現場、行政、地域の方々が一体となって心の問題に切れ目のない支援をすることが根本的な解決につながる」。若い頃から学校で薬に対するリテラシーを高める必要性も提言している。 ▽完治はしないと思うけれど オーバードーズを繰り返した和氣さんは、奈良県橿原市の「フラワーガーデン」に入所した。依存症を含む精神疾患などからの回復や成長、生き直しを支援する一般財団法人「ワンネス財団」の傘下組織だ。