「クスリを一度に40錠飲んだ。ふわふわして不安が消えた」オーバードーズの恐怖 若者がハマる背景に、孤独感や対人関係
見かねた両親が奈良県にある施設への入所を勧めた。依存症回復支援をはじめ、女性の生き直しに特化した専門機関「フラワーガーデン」だ。 和氣さんも「そろそろやめないと大変なことになる」とは思ったものの、入所は断った。「私は依存症ではない。やめようと思えばいつでもやめられる」 ただ、ちょうどその頃、新型コロナウイルスが東京で蔓延。自由に外出できなくなったせいで心境が変化した。「これでは施設に入所しているのと同じ。この期間だけ施設に行き、すぐに帰ってこよう」 両親からの度重なる勧めもあり、入所を決めた。両親の運転で奈良県へ。施設に持って行く荷物には、200錠の薬も入れていた。 ▽ろれつが回らない動画に「いいね」 オーバードーズは、深刻な社会問題になっている。 SNSで今年6月、若い女性が錠剤を次々に口に含み、水で飲み込む約50秒の動画が投稿された。女性はろれつが回っていない状態で、笑いながらカメラに向けて何か言葉を発している。撮影者の声も聞こえるが、同様にろれつが回っていない。2人ともオーバードーズ状態とみられる。現在はアカウントが凍結されたため閲覧できないが、似たような投稿は今も出回っている。
東京消防庁が取り扱う救急搬送には「睡眠薬・鎮痛・鎮静剤の服用・吸入・中毒による自損行為」という分類がある。これにより搬送された15~29歳は2018年が420人で、19年530人、20年584件、21年656人、22年814人と増え続けている。男女比では80%以上が女性。22年は85%超に当たる695人が女性だった。 滋賀県では2021年12月、京都市伏見区の女子高校生が薬物中毒で死亡した。大津地方裁判所は、向精神薬の「エチゾラム」を、正当な理由がないのに譲渡したとして40代の無職の男に有罪判決を言い渡している。判決などによると、男はオーバードーズを楽しむ仲間をSNSで募集していた20代女性=麻薬取締法違反罪で有罪確定=にエチゾラム100錠を譲渡。この女性を通じて知り合った女子高校生を自宅に呼び、50錠を渡していた。 ▽購入制限の「抜け道」 オーバードーズはなぜこれほど若者の間で広がっているのか。全国の中学、高校を対象に、薬物乱用防止の出張講座を開いている新潟薬科大の城田起郎助教に尋ねた。城田助教は、医薬品の製造販売状況を監視・指導する「薬事監視員」として鹿児島県庁に勤めていた経験から、こう説明する。