「ウォーキングで健康増進」の落とし穴とは?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください! 【関連画像】図1 速筋と遅筋の働きの違い ●「ウォーキングの効果」に関する問題 【問題】有酸素運動の代表で、体脂肪を燃焼させる効果があるウォーキング。このウォーキングについての説明で、間違っているものは以下のどれでしょう? (1)ウォーキングを行うと毛細血管が増え、酸素や栄養が全身に行き渡るようになる (2)ウォーキングで使われる筋肉は、年をとると減りやすい筋肉である (3)ウォーキングと食事制限だけでは筋肉が減る恐れがある
正解(間違っている説明)は、(2)ウォーキングで使われる筋肉は、年をとると減りやすい筋肉である です。 ●ウォーキングは脂肪を燃やすが筋肉は増やさない 多くの人が健康のために行っている運動として、筆頭に挙がるのがウォーキングでしょう。ウォーキングは有酸素運動の代表で、歩くだけで体脂肪を燃焼させる効果があります。道具やウェアが不要で、場所を選ばず、体力や筋力に自信のない人でも手軽に取り組めます。 ただし、ウォーキングで注意したいのは、「筋肉を増やす効果は得られにくい」ということです。それはなぜなのか、筋肉の構造を見ながら説明しましょう。 筋肉には細い線維状の筋線維という組織があり、それを束ねる筋束が集まっています。筋線維には、糖をエネルギーとして使う速筋と、脂肪を使う遅筋という、性質の異なる2種類の筋肉があります(図1)。 このうち、筋トレのような、瞬間的に力む運動(無酸素運動)によって増えるのが速筋です。速筋は白っぽい色の筋肉で、早く収縮することで大きな力を出すことができ、使うほど太くなって増える性質があります。速筋が大きくなるほど、エネルギーの燃焼量は増えます。一方で、使わないとそのぶん細くなるため、速筋は運動不足や加齢によって減りやすい筋肉でもあります。 一方、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に使われるのが遅筋です。遅筋を使うときは、エネルギーとして脂肪が使われます。速筋と違って、遅筋はゆっくり収縮し、大きな力は生まないので瞬発力は弱いものの、持久力に優れ、疲弊しにくい筋肉です。 遅筋には毛細血管が多く存在するため、赤っぽい色をしています。有酸素運動で遅筋を使うと、毛細血管が増え、全身の隅々まで酸素や栄養分が行き渡るようになります。遅筋を鍛えてもそれほど太くはなりませんが、毛細血管が増えてより多くの脂肪が燃焼しやすくなる(燃焼効率が上がる)のです。