若者向けパソコン企画に見る若者心理
NECパーソナルコンピュータは2024年11月14日、Z世代によるZ世代のための新ノートパソコン「LAVIESOL」を発表しました。このパソコンは、6人の若者がZ世代向けの新しいノートパソコンを企画し、商品として採択されるまでの様子を、「YouTube」のリアリティショー番組の「Nontitle」で公開しながら発売されたものです。 リアリティショーとは、企画のために集められた人たちがテーマに沿って自分自身で考え、行動する様子を追うドキュメンタリー番組を指します。今回はパソコンの開発ですが、スターの育成や投資、恋愛など、テーマはさまざまです。 リアリティショー人気の理由は、自分に近い年代の人たちの意見や行動に共感したり、疑問を抱いたりしながら視聴できることです。さらに台本がないため、結末が予測できず、最後まで目が離せません。1話の放送が終わるたび、「彼のあの発言はおかしい」「彼女の気持ちが分かる」などとSNSで議論するのも楽しみの一つです。 とはいえ、ノートパソコンの開発とリアリティショーが組むというのは、意外な試みです。
スマホネイティブから見るPC
Z世代が開発に携わったノートパソコン「LAVIE SOL」は、大学生をターゲットに定めています。最も特徴的な点は、スマホのように自分好みのケースを天板に装着し、個性を演出できるところでしょう。ブランドやキャラクターのデザインが施されたケースは、スマホのケースとほぼ同じイメージです。若者は透明なスマホケースを装着し、自分の推しの写真などを入れてカスタマイズします。ノートパソコンでも同じように自分らしさを表現したいのでしょう。また、着せ替えアプリを使って、壁紙やフォルダーのアイコン、マウスポインターを簡単にカスタマイズできるようにもなっています。 「iPhone」との連携もサポートされており、手軽にデータ転送できるようになっています。レポートに使う写真や動画、メモ、勉強に役立つ参考リンクの取得など、若者は普段からスマホで作業しているため、パソコンとの垣根をなくす仕組みは大事なポイントです。特に10代はiPhoneユーザーが多いため、iPhoneとの連携が楽である価値は大きいと思われます。 こうした、スマホとパソコンを近づける仕掛け以外にも、パステルカラーの本体、指紋を拭き取りやすいコーティング、キーボードのかな表記なしなど、見た目の重視がうかがえます。 リアリティショー番組では、若者がNECパーソナルコンピュータの担当者に「エモい」について解説し、ノートパソコンを相棒にしたいなど、意見交換する様子も公開されました。YouTubeでは、毎回40万~50万回の視聴回数でコメントも多数付いており、かなり注目されていました。一般的なリアリティショー同様、経過を知ることでZ世代はかなり興味を持つと思います。実際の売り上げにつながったのかは、続報を待ちたいと思います。 出典:日経パソコン、2024年12月23日号より 鈴木 朋子=ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 日立ソリューションズにてシステムエンジニア業務に従事、のちフリーライターに。SNS、スマホ、パソコン、Webサービスなど、入門書の著作は20冊を越える。ITの知見と2人の娘の子育て経験を生かして、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」として活動中。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)