「怒れる若者なんかよりネコのほうが賢い」 養老先生が感情的にならない理由とは?
斎藤元彦兵庫県知事の再選は大きな驚きを持って受け止められた。その推進力となったのがXをはじめとしたSNSであることは各方面で指摘されている通りだ。 【写真】長年、連れ添った「愛猫・まる」 人間の年齢でいうと90歳前後の大往生だった 斎藤知事に関しては、「疑惑」が報じられてしばらくはネット上でも批判的な意見がほとんどを占めていたが、辞職して一人街頭に立つ姿を発信するようになってから徐々に応援の声が増えていき、さらに「知事ははめられた」という説が広がるようになっていった。
もっとも、当選の前も後も両極端の見方を示す人が存在するのは確かで、反・斎藤派の人にとって今回の結果は許しがたいもののようである。 社会問題、主に政治関連のテーマで、立場が異なる人たちがののしり合う光景はすでにネット上ではおなじみのものだろう。日常生活ではあまり見られないような激しい言葉、心無い表現を用いる人も珍しくない。著名人であれば、「この人ってこんな人だっけ?」というネガティブな反応を招くことも多々ある。 『バカの壁』で知られる養老孟司さんは、自分自身ではSNSの類を一切やっていない。ネット上で過激な発言をしている人を見ると、「無駄に敵を作っている」と感じるのだという。 新著『人生の壁』では、その種の争いごとから一歩身を引いて生きることを勧めている。そのほうが幸せに近づけるのだ、と。以下、同書から見てみよう(以下、同書をもとに再構成しました)。 ***
無駄に敵を作る人
何かにつけて怒りっぽい人がいます。他人から見ると小さな問題であっても、見過ごせないようです。 その結果としてSNS上などで結構「炎上」していることもあります。私は基本的にそういう話には関わらないようにしています。彼らが無駄に敵を作っているように見えるのです。 そもそも、いつも誰かに文句を言っているというのは、幸せな人とは思えません。 儒教の伝統的な教えに「修身(しゅうしん)・斉家(せいか)・治国(ちこく)・平天下(へいてんか)」があります。己の身を修めて律し、家を整え、国を治め、天下が平和になる、ということです。自分の思うようにしても矩(のり)を踰(こ)えない。つまり世間の規範から外れない、人に迷惑をかけない。 その修身ができていないのに「あいつが悪い」「これが悪い」などと言っても仕方がありません。本当に自分が幸せな状態とはどういうものか、わかっていない人が多いのではないでしょうか。