【40代、50代・どうする?眼瞼下垂】眼瞼下垂の手術のメリット&デメリット、自分に合う方法の見つけ方、ずばり医師が答えます!
《基本の眼瞼下垂手術》 ◆挙筋前転法(別名:腱膜固定、挙筋腱膜前転法) <ターゲットとなる組織> 眼瞼挙筋腱膜 <標準的な手術時間> 40分~120分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 多い <ダウンタイム> 長い <術後の腫れ> 強い <再発のリスク> 少ない <再手術でのリカバリー> 比較的容易 <手術の内容> 瞼板から腱膜を剥離し、さらに腱膜とミュラー筋の間を剥離。腱膜のみを前転して瞼板に固定。ミュラー筋は前転させず、そのままの状態。 <微調整> 容易 <ミュラー筋の損傷> ありうる <適用症例の幅> 選ばない <メリット・デメリット> オールマイティな手術で、 形成外科で広く施行されている一般的な術式。 組織への負担はやや少ない代わりに、重度の場合は対応が難しいことも。 ◆挙筋短縮法 <ターゲットとなる組織> 眼瞼挙筋腱膜 <標準的な手術時間> 60分~120分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 普通 <ダウンタイム> 長い <術後の腫れ> 強い <再発のリスク> 少ない <再手術でのリカバリー> 困難 <手術の内容> 筋腱膜とミュラー筋を結膜から剥離し、腱膜を短くカットした上で両者を一緒に瞼板に固定。挙筋の機能が弱くなった重度の眼瞼下垂の場合に選択。 <微調整> 普通 <ミュラー筋の損傷> ありうる <適用症例の幅> 選ばない <メリット・デメリット> ミュラー筋を結膜から剥離するので、他の術式に比べて若干時間を要し、組織に対して負担の大きい術式。 修正が難しい過矯正のリスクも。 ◆眼瞼挙筋タッキング <ターゲットとなる組織> 眼瞼挙筋腱膜 + ミュラー筋 <標準的な手術時間> 40分~120分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 多い <ダウンタイム> 長い <術後の腫れ> 強い <再発のリスク> 少ない <再手術でのリカバリー> 比較的容易 <手術の内容> 瞼板と腱膜との接合を外さずに、腱膜と瞼板の付着部へ腱膜の末梢を折り畳むようにして固定。挙筋腱膜のズレを整復する手術。 <微調整> 容易 <ミュラー筋の損傷> ほぼなし <適用症例の幅> 選ばない <メリット・デメリット> 最も簡単な術式で、軽度から中等度まで適用範囲が広い。 瞼板上に組織を折り重ねるため、接着固定が弱い可能性も。 ◆ミュラー筋タッキング(別名:ミュラータック法) <ターゲットとなる組織> ミュラー筋 <標準的な手術時間> 60分~120分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 多い <ダウンタイム> 長い <術後の腫れ> 強い <再発のリスク> 普通 <再手術でのリカバリー> 困難 <手術の内容> 挙筋腱膜とミュラー筋の間を剥離してミュラー筋を露出させ、短く折り畳むようにして瞼板軟骨に固定する手術。 <微調整> 困難 <ミュラー筋の損傷> ありうる <適用症例の幅> 選ばない <メリット・デメリット> 挙筋腱膜から軟らかいミュラー筋を剥離し、軟らかいミュラー筋のみを縫い縮めて瞼板に固定。まぶたのラインが自然な形になりやすい反面、重度の症例には対応できないことも。また術後眼瞼痙攣などのリスクも。 《軽度の偽眼瞼下垂のたるみ取り手術》 ◆上眼瞼リフト(別名:眼瞼皮膚切除術、 上眼瞼たるみ取り、 単純皮膚切開手術) <ターゲットとなる組織> 瞼の皮膚 <標準的な手術時間> 30分~60分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 多い <ダウンタイム> 普通 <術後の腫れ> 普通 <再発のリスク> 普通 <再手術でのリカバリー> 容易 <手術の内容> 眼瞼挙筋、ミュラー筋などのまぶたを引き上げる筋肉には操作を加えず、単純にまぶたの皮膚、場合によっては眼輪筋を切除する方法。 <微調整> 普通 <ミュラー筋の損傷> なし <適用症例の幅> 限定的 <メリット・デメリット> まぶたの皮膚のたるみによる偽眼瞼下垂などに最適。眉下切開などに比べ、皮膚の切除できる量に限界があり、やり過ぎると兎眼になりやすい。重度のたるみには不向き。 ◆上眼瞼リフト(別名:眉下切開・眉上切開、 アイリフト) <ターゲットとなる組織> 眉毛周囲の皮膚 <標準的な手術時間> 40分~90分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 普通 <ダウンタイム> 普通 <術後の腫れ> 普通 <再発のリスク> 普通 <再手術でのリカバリー> 容易 <手術の内容> 眼瞼皮膚切除術と似ているが、目から離れた部分、すなわち眉毛周囲の皮膚とROOF (隔膜前脂肪)を切除し、まぶたの厚み・ 重みを減らす手術。 <微調整> 普通 <ミュラー筋の損傷> なし <適用症例の幅> 限定的 <メリット・デメリット> 眼瞼下垂を直接治すというよりまぶたのたるみや重みを治す目的のため、重度の下垂には不向き。眼瞼挙筋前転法などの手術後に、皮膚の余剰が残っている場合に、追加で皮膚のかぶり重みを改善する目的で選択することも。 《表面を切らない埋没法》 ◆切らない眼鏡下手術(別名:埋没式眼臉下垂手術) <ターゲットとなる組織> ミュラー筋 <標準的な手術時間> 15分~30分 <費用> 高額 <施術可能な施設数> 少ない <ダウンタイム> 短い <術後の腫れ> 少ない <再発のリスク> 普通 <再手術でのリカバリー> 困難 <手術の内容> 眼瞼挙筋と挙筋腱膜を糸で引っ張り、瞼板に固定する手術。皮膚側からアプローチする場合のほか、 まぶたの裏側(結膜側)から行うことも。 <微調整> 困難 <ミュラー筋の損傷> ありうる <適用症例の幅> 限定的 <メリット・デメリット> 軽度の眼瞼下垂向き。重度の場合は症状改善があまり期待できないことも。術野が狭いまぶたの裏で緩んだ眼瞼挙筋や腱膜を糸で引き締めるため、術者のスキルによっては手術結果が安定しない。 ◆経結膜眼瞼下垂手術 <ターゲットとなる組織> ミュラー筋 <標準的な手術時間> 30分~60分 <費用> 保険適用なら低額 <施術可能な施設数> 少ない <ダウンタイム> 短い <術後の腫れ> 少ない <再発のリスク> 普通 <再手術でのリカバリー> 困難 <手術の内容> まぶた表面の皮膚ではなく、まぶたの裏側である結膜を切開し、ミュラー筋を短縮して瞼板に固定する手術。 <微調整> 困難 <ミュラー筋の損傷> ありうる <適用症例の幅> 限定的 <メリット・デメリット> 皮膚側を切る方法より腫れや内出血が目立ちにくい反面、二重幅が狭かったり、二重ラインの食い込みが薄くなって消失するケースも。その場合は、後で二重形成手術を別に検討。
【教えてくれたのは】 高田尚忠さん 眼科医。高田眼科(静岡県浜松市)院長、フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(愛知県名古屋市)主宰。眼科医と形成外科医の知識、豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとにファシアリリース法を考案。保険適用手術にこだわり、手がける眼瞼下垂手術は年間2000件以上。全国から患者が来院。メールでの眼瞼下垂相談も可能。 イラスト・写真/Shutterstock 表/小柳東子 取材・原文・画像制作/蓮見則子