レース業界の人材不足解消に向け「“入口”を照らすことが重要」。山本尚貴の学校訪問、3回目の今年は対象を高校生にも拡大
7月11日、レーシングドライバーの山本尚貴が、母校である栃木県の作新学院を訪問。今年は小学部に加え、高等学校でも講演が実施された。 【オンボード動画比較】フォーミュラカー、ムズ過ぎんだろ……! 編集部員が1周30秒弱のコースで伊藤大輔に大敗した【プロvs素人】 国内最高峰レースであるスーパーフォーミュラ、スーパーGTに参戦する山本による学校訪問は2022年から実施されており、今年が3回目。今回は作新学院小学部の児童への講演に加え、作新学院高等学校 情報科学部 自動車整備士養成科の生徒への講演も新たに行なわれた。 また、小学部の全児童421名および保護者1名をモビリティリゾートもてぎで8月24日、25日に行なわれるスーパーフォーミュラ第5戦に招待するだけでなく、自動車整備士養成科の生徒約30名をレースウィーク中のピット見学などに招待するという。 対象を高校生まで広げた経緯について山本は、先日の公式テストの際に次のように語っていた。 「小学生を招待して現場に来てもらい、レーサーだけではない、サーキットでの色々な職業に触れてもらうことで、その職業に就くきっかけになるインパクトがあれば良いと思っていますので、これは継続していきます」 「(高等学校の訪問は)その延長線上で、僕たちドライバーは育成のプログラムがあったりとある程度の道筋がある一方で、メカニックはどうすればなれるかというのが不明瞭な部分もあると思います。メカニックの人材が不足しているという声が聞こえてきた中で、母校に自動車整備士養成科があるので、彼らにレースの現場に来てもらい、実際の仕事ぶりを見せたいと思いました。現場ではなかなか具体的な話もできないと思いますので、そこは授業を通してお話しできればと思います」 「その生徒さんの中から、いつか自分のタイヤ交換だったりをやってくれるような方が出てくれば良いなと思いますし、それも現役を続けるひとつのモチベーションにして頑張りたいと思っています」 迎えた講演では、まず小学部の児童たちの前に登場。「感謝の気持ちを忘れないこと」や「自分の命と身体を大切にすること」などを伝えた。その後の高等学校での講演では、山本の所属チームであるPONOS NAKAJIMA RACINGの浅見邦彦メカニックと共に、レースメカニックのやりがい、ディーラーメカニックとの違いなどについて、より具体的なトークを行なった。 当日は36歳の誕生日ということで、児童と生徒から祝福も受けた山本。「(小学部の訪問の際に)純粋な目で旗を振ってもらったのを見て、力をもらいましたし、もっと頑張らないとなと思いました」と笑顔で語った。 メカニックに限らず、レース業界のなり手が少ないという現状は業界が抱える課題のひとつと言える。特に、レースが好きであっても、自分がその業界に入って働くというイメージがしにくい、という点は大いにあるのではないだろうか。そういった情報不足を解消していく上でも、今回のような取り組みは大きな意義があるだろう。 業界に入ってくる人材を増やすために必要なことについて山本に尋ねると、彼は次のように語った。 「何においても、入口が大切だと思います」 「どういう風にすればレーサーになれるのか、メカニックになれるのか、そういう入口を広げてあげる、照らしてあげる作業というのが、現場にいる人たちがすべきことなのかなと思います。今回の授業でどれだけの方がレースやレースメカニックに興味を持ってくださったかは定かではありませんが、ひとりでも多くの人に興味を持ってもらえると嬉しいですし、既にメカニックになりたいと思っていた方は、さらに強い気持ちを持つきっかけになっていると嬉しいです」 「(人材が業界に)入ってきてからは、レースの楽しさをやりながら伝えていくことが一番大切だと思います。当然社会に出れば楽しいことばかりではないですし、思い通りに事が進まないことばかりだと思いますので、壁にぶち当たった時に挫けないで、『負けてたまるか』『絶対に夢を実現させるんだ』という強い志を持ってもらいたいですし、そういう志を持ち続けられるような環境、現場を周りの大人たちが作っていく必要があると思います」
戎井健一郎
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