「自分の中にある、相反する3つのホラーに対する価値観を反映」大人気ホラー『近畿地方のある場所について』背筋さんに、2冊の新作についてインタビュー!
ひとりでも多くの人をホラー界に引きずり込みたい
――ここ数年、ホラー小説ブームが巻き起こっているなんて耳にしますが、背筋さんは現状をどう受け止めていますか? 背筋:たしかにホラーがブームになっているとよく聞きますが、好きな人はずっと好きじゃないですか。だから「ブーム」と言われても、正直ピンとこないところはありますね(笑)。だって、私は昔からずっと好きだったしなぁって。 でも、ホラー作品自体は確実に増えていると感じます。それはいちホラー好きとして、読めるものが増えているということなので嬉しいです。 ――ホラー小説が増えることで、読者による考察もどんどん盛んになっているような印象も受けます。背筋さんの作品もまさに「考察の対象」になり得るものばかりですよね。 背筋:考察をしていただけるということは、それぐらいの熱量を持って私の作品を読んでくださっているということだとも思うので、とてもありがたいですね。 一方で、誰かの考察を読まないと理解できないという物語は、作品として不完全なのかもしれないとも思っていて。本来であれば、読者一人ひとりが自ら考え、答えに辿り着けるのがベストだと思うんですよ。だから、考察の余地があるけれどもよくよく考えてみたら理解できる、くらいのバランスを目指したいんですが、難しいなと感じています。 ――ホラーの書き手としての目標はありますか? 背筋:私は『近畿地方の~』みたいなモキュメンタリーも、『穢れた聖地巡礼について』のような人間のドロドロしたところが顕わになる作品も好きなんです。でも、ホラーを分解してみると、その二つ以外にももっともっと細分化できます。そして、私はそれらも好き。だから今後は、これまでの作品では見せられなかったホラーの新たな一面を切り口にしたものを、自分なりの表現で書いていきたいです。 そして、ひとりのホラーオタクとして、たくさんの人をホラー界に引きずり込めたらいいな、と。ホラーと聞くだけで拒否反応を示す人っていると思うんですが、ホラーは怖いだけじゃないし、でも怖くて、それが楽しいんだよ、ということを伝えていきたい。ありとあらゆる観点から包囲網を敷いて、ホラーの良さを広げていこうと思います。