「自分の中にある、相反する3つのホラーに対する価値観を反映」大人気ホラー『近畿地方のある場所について』背筋さんに、2冊の新作についてインタビュー!
アンケートによって「種明かし」と「恐怖」を両立させる
――ほぼ同時期に『口に関するアンケート』という作品も発表されました。短編ながらもゾッとする切れ味を持つ作品でしたが、これはどのように生まれたんですか?
背筋:『近畿地方の~』を書いたあとにびっくりするくらいお仕事をいただいて、なんだか無我夢中で書いているなかで生まれた、得体のしれないものという感じなんです。担当編集者に送ったプロットもほぼ完成形の状態だったので、ラリーをしながら書いていったというよりも急に降って湧いた作品ですね。正直、自分でも気持ち悪いです(笑)。 ――心霊スポットを訪れた大学生たちの語りが描かれていきますが、最も恐ろしいのは最後に収録されている「アンケート」の部分です。 背筋:そのアンケートは、機能的には物語の種明かしを担っています。作中で一体なにが起こっていたのか、読者が置いてけぼりにならないよう、どんな風に種明かしするかを考えた結果、アンケートに辿り着いたんです。 単純に「こういうことが起こっていたんですよ!」と説明することもできたとは思うんですが、それだと怖さが半減してしまうかもしれない。じゃあ、怖さと種明かしを両立させるためにはどうすればいいんだろう……と悩んでいたときに、不意に思いつきました。 ――アンケートが種明かしになっていて、しかも怖い、というのは未読の人にはなかなかイメージしづらいかもしれません。そこは読んでからのお楽しみですね。 背筋:そうですね。アンケートって問1から順番に答えていく形式のものじゃないですか。だから「このアンケートはなんなんだろう?」と思いながら答えてもらい、最後の問いに行き着いたときに恐怖を味わってもらえたら嬉しいですね。 それとこの作品は、話題にしやすさがあるかなと思っています。最後にアンケートがついていることもそうですが、本としてはサイズが小さいですし、タイトルが意味不明ですし、口元のアップの装丁も不気味。だから、「『口に関するアンケート』っていうやばい本があるんだよ」と口コミで広まってくれたらありがたいな、という狙いも密かに持っています。