出てきた五輪レスリング存続の可能性
日本国内での存続活動、約100万人が署名
レスリングの五輪競技種目除外問題に関しては、さまざまな理由が噂されている。しかし、今に至るまでどんな要素が決定打となって除外されたのかわからない。ルールのわかりづらさやマネタイズに劣ることなど噂ばかりだ。だが、まだ2020年五輪で実施されないと決まったわけではなく、現時点で判明しているのはIOCによる手順だけだ。 まず29日からで開催されるIOC理事会でレスリングを含む8つの競技(レスリング、野球とソフトボール:競技団体を1競技として統合、空手、武術太極拳、スカッシュ、ローラースポーツ、スポーツクライミング、ウエークボード)が3つに絞り込まれる。そして、9月の総会でたった1つが2020年五輪の実施種目に選ばれる。 五輪競技の存続を願い、今も世界中でさまざまな活動が続けられている。世界一の会員数があるSNS、Facebookではレスリングの五輪存続を訴える特設サイトが米国の関係者によってつくられた。署名活動は日本でも行われ、つい先日まで、五輪メダリストたちが街頭に立ち呼びかけていた姿を記憶している人も多いだろう。 署名は国際レスリング連盟(FILA)へ届けられるというが、これらはIOCの決定に影響を及ぼすのだろうか? 答えは、“わからない“だ。 本音を言うと、おそらく署名はIOCの決定には何の影響も及ぼさない。それでもじっとしていられないというのが、選手など当事者たちの本音だろう。 中核競技から除外されて以来、ことあるごとに、なぜ五輪が必要なのかという問いが繰り返されてきた。金メダリストをはじめ関係者がそれに答えてきたが、「五輪を目指す子どもたちの夢のために」、「自分を育ててくれたレスリングは素晴らしいので」という、どれも絶対に必要という理由には届かない。 本当なら五輪競技であることの意味についてじっくり考えたいが、決定の日時が迫っている。考えるよりも動くことを優先した結果、競技人口が1万人弱と言われる日本だけで100万人もの署名が集まった。五輪存続のメッセージを世界へ発信しようと、5月は国際レスリング月間と位置づけられ、ニューヨークでは米国、イラン、ロシアの国別対抗戦が地下鉄駅で開催された。 同じころ、ロシアのモスクワでFILAの臨時理事会が開かれ、現行のルールを変更すること、副会長へ女性を登用する方針が決定され、さらに階級の数を減らす提案も考慮されていると明かされた。新ルールはすぐさま実施され、今年の日本代表選考会でもある6月15、16日の全日本選抜選手権は新ルールで行われる。 29日からのIOC理事会でのプレゼンテーションには、FILAからラロビッチ会長に加え、3人の五輪メダリストが参加する。女子の普及が今ひとつと言われるレスリングだが、既婚者で、うち一人は一児の母でもある女性メダリスト2人がスピーチする意味は大きい。また、ナイジェリア移民でもあるカナダの金メダリスト、イガリが壇上に立つことで、どんな環境でも金メダリストになるチャンスがある競技とIOCのメンバーに印象づけようとしている。