出てきた五輪レスリング存続の可能性
8競技の中で、3競技に選ばれる可能性は高い
これらの運動や改革の結果、ロゲIOC会長が「除外の理由を検討し、きちんと対応している」と、AP通信のインタビューに答えたように、レスリングは有利な位置になったという見方もある。だが、中核競技から除外される動きをまったく察知できていなかったのに、わずか3ヶ月で有利な状況になっているのだろうか? 確かに29日からのIOC理事会で選出される3競技に選ばれる確率はかなり高くなっただろう。だが、9月に決まる1つだけの実施競技に選ばれるとは言いづらい。他競技の運営団体は、すでに何年もかけて“五輪へのふさわしさ“を認めさせてきた。FILAは、いくつも数え上げられた問題点のうち、特に選手の権利が保護されていない批判に対し“改善“を印象づける時間が短い。 与えられた時間は短いが、チャンスはある。新ルールをどのように世界へ浸透させていくかを見せることで、FILAの運営手腕が根本的に変わったと示せるからだ。今回変更が発表された新ルールは、技をかけることを重視した、よい変更だと誰もが認めている。まるでくじ引き大会と揶揄された攻撃権を決める抽選が廃止され、テイクダウンは場外への押し出しよりも高く点数がつけられるようになった。心配されるのはその“運用“である。 この10年ほどの間、現場から乖離したルール変更が繰り返された結果、フェアプレー精神とはかけ離れた出来事をいくつも起こしてきた。だが、それらの不祥事がなぜ起きたのか原因を追及せず、再発防止も口先だけで取り組んでいない。世界選手権まで広げれば不手際はもっと多い。新ルールの実施は、これらを減らすFILAの運用手腕が問われている。 例えば急造された新ルールに不具合がある場合、選手たちが訴えられる仕組みはあるのか。これまで何度も目撃させられた、不自然な形で裁定委員(ジュリー)が試合を覆してしまう場合でも、不服申し立てをする手段は考えられているのか。 人と人が生身で対戦し、人が審判をするレスリングには、文言で書かれたルールではカバーしきれない多様な動きがある。そこが特徴でもあり、面白さの源でもある。だが、運用がうまくなされないと、試合の進行が妨げられるだけでなく面白さも損なわれる。 環境問題がクローズアップされたときに広まった「持続可能性(sustainability)」という言葉がある。この言葉は、石油などの資源が将来にわたって利用可能なのかを問うときに用いられ、今では経済的、社会的側面についても使われている。五輪の競技種目にも、この持続可能性が求められている。