大統領候補指名を確実にしたハリス氏の強みと弱み:過去の言動からハリス氏の経済政策を占う
過去の言動からハリス大統領の政策を占う:中低所得者支援の姿勢がより強い
他方、ハリス氏の弱点は、自らの政策についての考えを明確に打ち出せていないことだろう。ハリス氏が大統領になった場合には、現在のバイデン政権の路線を多く引き継ぐことになるだろうが、異なる部分も出てくるはずだ。ハリス氏の過去の言動から、ハリス大統領誕生時の政策姿勢を占ってみよう。 2025年に期限を迎える所得減税について、バイデン大統領は所得が40万ドル(約6,200万円)を下回る世帯の減税は延長する考えであるが、ハリス氏もこれを支持している。 税制面で、ハリス氏が上院議員、また2020年大統領選の立候補者として取り組んだ代表的なものが、「LIFT(リフト)」と呼ばれる法案だ。これは、最低限の所得を保障する「ユニバーサル・ベーシックインカム」に似た仕組みである。ハリス氏の案は、個人に3,000ドル、夫婦に6,000ドルの税額控除を提供するもので、コストは10年間で約3兆ドルに及ぶと推定された。 民主党は2021年、児童税額控除と子どものいない労働者に対する勤労所得税額控除を拡大した。この措置は2021年末で失効したものの、バイデン政権は復活させる方針を示している。税額控除を通じた所得支援という考え方は、バイデン氏とハリス氏が共有している。しかし、「LIFT(リフト)」の考えを踏まえると、税制を通じた低所得者への所得支援の考え方は、ハリス氏の方がより強そうだ。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ハリス氏は選挙スタッフに向けた22日の演説のなかで、有給家族休暇制度や低コストの児童保育推進を経済分野での優先事項に挙げたという。 またハリス氏は、バイデン政権初期に、新型コロナウイルス問題への対応として導入された給与保護プログラム(PPP)を通じて、返済免除が可能となる融資を中小企業が受けられるよう努力したという。同氏は特にマイノリティ(少数派)のコミュニティへの支援を重視していたとされる。 さらにハリス氏は、2020年大統領選の予備選で、不平等や賃金格差の是正に向けたさまざまな提案を行った。その一つは男女間の賃金格差縮小を目指したものであり、格差があれば100人以上の従業員を抱える企業は罰金の対象になる可能性があった。