16年ぶり自己株買いでみずほが取り戻した「平時」、長年の課題「脆弱資本」との決別に市場も好感
対照的に、みずほFGは2011年にベトナムのベトコンバンクに約450億円出資した程度。低金利下の国内では思うように収益を伸ばせない一方、自己資本比率を押し下げる海外金融機関の買収にも踏み切れず、窮屈な経営を強いられていた。 ■「選択と集中」が奏功 そこでみずほFGは、東南アジアでの買収攻勢には距離を置く代わりに、国内の大企業取引や北米での投資銀行業務など、得意分野に経営資源を投下する。2015年にはイギリスのロイヤル・バンク・オブ・スコットランドから北米向けの貸出債権やコミットメントラインを約3500億円で取得。
加えて着手したのが経費削減だ。もともとみずほFGの経費率は3メガ中ワースト。そこで2017年、全従業員の4分の1にあたる1.9万人と100拠点の削減を標榜し、2018年度決算では基幹システムなどの減損で6800億円もの損失を計上した。2021年からのシステム障害で改革は一時停滞したものの、荒療治により2023年度の経費率は他メガと肩を並べる62.9%まで下がった。 こうして自己資本比率が9%台に乗ると、距離を置いていた資本提携や買収にも踏み切るようになる。2022年から楽天証券に累計1670億円を出資し、2023年にはアメリカのM&Aアドバイザリー会社のグリーンヒルを約760億円で買収。今年に入っても、クレディセゾンのインド子会社に210億円を出資した。
みずほFGは自己資本比率が9%台半ば~10%台半ばの範囲にある場合、「機動的な自己株買いの検討」を行うとしている。2024年3月末時点での自己資本比率は9.8%。本来であれば、いつ行われても不思議はなかった。 だが、自己株買いに対する市場の期待はしぼんでいた。要因は9月末に明らかになった、楽天カードとの資本提携だ。1000億~2000億円規模の出資が見込まれる中、自己株買いを行う余力は残らないと考えられたからだ。