16年ぶり自己株買いでみずほが取り戻した「平時」、長年の課題「脆弱資本」との決別に市場も好感
3メガバンクが11月14日に発表した2024年度中間決算は、いずれも中間期としては過去最高益だった。株主還元も大盤振る舞いとなり、増配に加えて三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は3000億円、三井住友FGは1500億円、みずほFGは1000億円もの自己株買いを決めた。 【図表】みずほフィナンシャルグループの自己資本比率が悲願の2ケタ乗せ 市場が好感したのは、取得額が最も小さかったみずほFGだ。翌15日の株価はほかの2メガが1%台の上昇にとどまる一方、みずほFGは6%以上も上昇し、同社だけ年初来高値をつけた。
みずほFGの自己株買いは2008年以来、実に16年ぶり。市場にとってもサプライズだった。資本不足という積年の課題にケリをつけ、みずほもようやく「平時」の経営を取り戻した。 ■後塵を拝した自己資本 「長い間、資本が足りなかった。資本の充実を重視してきたのが功を奏して、今は『10.5%』で十分(な水準)だ」。14日の決算説明会で、みずほFGの木原正裕社長は力を込めた。 10.5%とは、同社が意識する自己資本比率(CET1比率、その他有価証券評価差額金を除く)だ。内部留保や普通株式など損失吸収力の高い資本のみで構成される数値だが、みずほFGは長らくライバル2社の後塵を拝していた。
みずほFGが最後に自己株買いを行ったのは2008年7月。直後のリーマンショックで株価急落や与信費用の急増に見舞われ、みずほFGを含む3メガは2008年度決算で数千億円もの巨額赤字を計上した。国際資本規制の厳格化もあり、3メガとも2度の公募増資を断行し資本の底上げを急いだ。 その後、三井住友FGは2011年、三菱UFJFGは2014年に自己株買いを再開。片や、みずほFGは資本の減少につながる自己株買いに踏み切れなかった。当時の資本規制ルールで比較しても、増資後の自己資本比率でなお1~2ポイント劣後していたからだ。
資本不足は、株主還元以外の場面でもみずほFGの足かせとなった。企業買収によるインオーガニック成長だ。 三菱UFJFGは2013年にタイのアユタヤ銀行を5360億円で買収し、2019年に完了したインドネシアのバンクダナモンの買収にも総額6800億円を投じた。三井住友FGも2013年以降インドネシアのBTPN(現バンクSMBCインドネシア)の買収に約2600億円を、2021年にインドのノンバンク買収に約2200億円をそれぞれ費やしている。