プラごみ分別回収 静岡市が28年度から リサイクル技術進展、国の方針受け【ニュースを追う】
静岡市は家庭で発生するプラスチックごみ(プラごみ)の分別回収を早ければ2028年度から開始し、可燃ごみとして焼却処理する手法から、脱炭素に貢献するリサイクルシステムへと転換する。近年のリサイクル技術の進展を踏まえ、国が22年からプラごみを焼却処分し熱源として再利用する「サーマルリカバリー」をリサイクルとみなさなくなったことが背景にある。静岡県内で容器包装プラごみの分別未実施の自治体は静岡市を含め16市町。ごみの処理事情は自治体によってさまざまで、静岡市のように転換が進むかは見通せない。 ■熱源活用で資源循環 静岡市はプラごみの発生抑制を啓発しつつ、プラごみを燃やすことで高温になっても損傷しにくい焼却炉を整備し、排熱を発電や温水プールに、焼却灰を溶融スラグにそれぞれ再利用する資源循環システムを構築してきた。国が07年、容器包装プラごみのサーマルリカバリーをリサイクル手法と認めるよう法改正したことも取り組みを後押しした。 ただ、国はその後のリサイクル技術進展や脱炭素・循環型社会推進の方針を踏まえ、22年施行のプラスチック資源循環促進法でサーマルリカバリーをリサイクルとみなさない方針に転換。静岡市も現行システムの変更にかじを切った。市の試算では、年間5800トン程度排出される家庭系プラごみを再生利用することで、1万3820トンの二酸化炭素(CO2)排出量削減につながるという。 ■費用面でメリット 費用面は年間でプラごみ収集費に約6億8千万円、中間処理委託料に約2億6千万円などの負担が発生する一方、可燃ごみ収集費の約1億8千万円減額などを見込み、焼却処理と比べて計約8億4千万円の負担増と試算する。ただ、プラごみを分別しない場合、15年間で173億円(年平均11億5千万円)と見込む国の清掃施設整備費交付金が受けられなくなるため、市の担当者はプラごみを分別回収する方が費用面でもメリットがあると説明する。 ■脱炭素に遅れぬよう 市が22年7月に実施した市民アンケート(有効回答868人)では、62%がプラごみの分別回収を実施すべきと回答し、「すべきでない」の24%を大きく上回った。難波喬司市長は今年10月の定例記者会見で「今のやり方を続けると脱炭素の観点から完全に後れを取ることになる。市民には丁寧に説明していく」と述べた。 分別回収への移行は、市内にプラごみを中間処理したり、再資源化したりする民間施設を誘致し、輸送にかかる環境負荷を軽減することが前提。難波市長は、事前の市場調査で複数の事業者が前向きに回答したことから「おそらく実現できる」と自信を示した。