円安は日本にプラス、パニックの理由でない-ポール・クルーグマン氏
(ブルームバーグ): ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は2日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、日本経済にとって需要押し上げにつながる円安に日本の通貨当局がパニックとなっているのは理解し難いと語った。
クルーグマン氏は「日本がなぜ円安をこれほど懸念しているのか当惑させられると言わざるを得ない」と指摘。「円安は多少の時差を伴って日本の物品・サービス需要に実際には前向きとなる」とし、「なぜこれほど多くのパニックを引き起こしているように見受けられるのか不可解だ」と話した。
日本の財務省が5月31日に発表した4月26日-5月29日の為替介入額は9兆7885億円と、月次ベースの介入額として過去最大を更新した。政府サイドの行動を受け、日本銀行は円安圧力を和らげるため7月までに追加利上げに踏み切る可能性があるとの観測が台頭している。
政府・日銀の為替介入、過去最大の9.8兆円-29日までの1カ月間
現在はニューヨーク市立大学の経済学教授を務めるクルーグマン氏はまた、日本がようやく持続的なインフレ圧力を実現したか納得していないとも発言。「そのように望むが、日本のデータを見ても納得できない」と語った。
「根本的な種類の力強さはまだ見られない。日本の長期的な弱さは人口動態、極めて低い出生率に関係している。日本は少なくとも以前よりは移民にオープンになったが、この点に変化はない。道のりは遠い」との見解を表明した。
円安の最大の要因は日米金利差だ。根強いインフレを背景に、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局が近いうちに利下げするとの予想はほとんどないものの、クルーグマン氏は米利下げでもインフレ再加速の可能性は非常に小さいと見受けられるとして、早期に金利を引き下げた方がよいとの考えをあらためて示した。
クルーグマン氏は金融政策運営を自動車の運転に例えて、「インフレがバックミラーでかなり遠ざかるまで夢中になり」、本当は前方の自動車事故の回避に集中すべきだったという事態にはならならないとの「シグナルを発するためだけにも、利下げが望ましい」と解説した。