体が衰え、口うるささが加速した〈年金16万円・75歳〉の母のお世話に、40代バツイチ長女疲弊…無責任な外野の親族との攻防に見た、介護生活の切ない実情
「はぁ? そんなこというなら、あなたがお母さんを見なさいよ!」
女性の母親は75歳。施設の入居期間は一般的に5年以下といわれるが、長期の入居も想定し、月額費用は母親の年金額である月16万円以内で、入居金がなるべく安い施設を探した。すると、自宅から少し離れた施設に空きがあることが分かった。 「妹に、母を施設に預けようと思っていると伝えたのです。〈このままでは、私が働けなくなってしまうから〉と。そうしたら、〈お母さんをそんなところに押し込めて、財産をひとり占めするつもり!?〉だって…。〈はぁ? そんなこというなら、あなたが母を見なさいよ〉〈私はあなたと違って稼いでいるのよ、あんな家いらないわ〉って、いってやりましたよ」 一方、かたくなだった佐藤さんの母親だが、自宅でひとり留守番をしているときに、リビングの何もない場所で転んで腰を強打。それがショックだったようで、娘が勧めた施設への入所をしぶしぶ了承したという経緯があった。 ところが、妹に電話した翌日の日曜日、妹は母親の弟と妹である、叔父叔母を引き連れてやってきた。叔父と叔母は、家に来るなり挨拶もそこそこに、 「親をあんな所に押し込めるなんて、なにを考えているんだ!」 「子どもとしての責任を果たしたらどうなの?」 と激怒。 「お姉ちゃんは財産をひとり占めするつもりなのよ!」 と後ろからさらに追撃する妹のひと言に、佐藤さんはキレた。 「じゃあ、あなたたちが面倒を見なさいよ! 私は知らないわ!!」
介護問題、想像と現実との間に「大きな乖離」
その数日後、佐藤さんは泣きじゃくる母親をタクシーに乗せ、施設へと送った。 「別に、普通に過ごしているみたいですよ。面会に行ったら、恥ずかしそうに〈食事がおいしい〉といっていたので、まあ、大丈夫だと思います」 佐藤さんは3週間に一度、どんなに忙しくても月に一度は面会に行くようにしているという。 「妹と叔父叔母ですか? 入所当初は数日おきに行っては泣いていたみたいですけれど、最近はまったく足を運んでいないらしいです。それ以上のことはわかりません」 朝日生命『自分の老後・介護についての意識調査』によると、「将来介護が必要な状態になると思うか」の問いに「思う」「少し思う」と回答した人は、合計で約7割。 そして、「介護されるなら、誰にしてもらいたいか」の問いには、「その他の第3者」と回答した人が37.4%で最多。さらに「介護生活に望ましいカタチ」を聞いたところ、「介護施設に入居する」が56.7%でトップとなっている。 そして「介護が必要になったときに不安に思うことは」の問いの最多の回答は「介護費用をまかなうための資金が不足すること 」が62.2%。「家族・親族に肉体的・精神的な負担をかけること」55.1%、「公的介護保険の内容だけでは支援として不十分なこと」49.1%、「家族・親族に経済的な負担をかけること」 45.8%、「介護してくれる人が身近にいないこと」45.2%、「介護がいつまで続くかわからないこと」44.9%となっている。 懸念事項は主に「お金」と「介護者への負担」ということか。 しかし、実際に介護される当事者になってみれば、佐藤さんや佐藤さんの母親のように、また違った考えや感じ方になるのかもしれない。 介護問題は、想像と現実との間に、大きな乖離があるようだ。 [参照] 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」 総務省「人口推計月報」
THE GOLD ONLINE編集部