体が衰え、口うるささが加速した〈年金16万円・75歳〉の母のお世話に、40代バツイチ長女疲弊…無責任な外野の親族との攻防に見た、介護生活の切ない実情
家族の在り方、個人の生き方が大きく変化している現在、高齢の家族を自宅介護できる人は限られている。しかし、人々が思い描く「理想の介護」はアップデートされていないようで…。実情を見ていく。 【早見表】国民年金・厚生年金「年金受取額」分布…みんな、いくら年金をもらっているのか?
高齢母からの同居要請に屈した、40代バツイチ会社員
少子高齢化が進展する日本では、高齢となった親の介護に悩む人が増えている。かつての日本は家族ぐるみで介護を行っていたが、その後、核家族化や共働き夫婦の増加といった家庭のあり方の変化により、従来のように「家族内で対処する」ことは難しくなっているのだ。 輪をかけて問題を難しくしているのは、想定以上の長生きと、介護する人・される人の「アップデートが追い付かない価値観」かもしれない。 横浜市在住の40代の女性、佐藤さん(仮名)は、折り合いの悪い母親を介護施設に入所させようとしたところ、自分のきょうだいや、母親のきょうだいである叔父叔母から大反対され、トラブルになったという。 「私は妹と2人姉妹なのですが、妹は電車で20分程度の距離に暮らしているのに、自分の家庭を理由にして〈我関せず〉を貫いているのです」 佐藤さんは独身の会社員。30代でバツイチとなった。お子さんはいない。 「離婚後もずっと同じ会社に勤務しています。中間管理職で、収入は一般的なサラリーマンの平均より少し上ぐらい。残業もありますが、そこまで大変ではありません」 佐藤さんが離婚した6年前、すでに父親は亡くなっており、川崎市の実家では母親がひとり暮らしをしていた。母親は離婚した娘に実家へ戻るよう再三にわたって要請したという。 最初はかたくなに拒否していた佐藤さんだが、周囲の親族から「離婚して親を悲しませるなんて」「長女なのに無責任」と攻め立てられ、いったん実家に戻る形になった。 「そのせいで、心底後悔することになりました…」
体が思うように動かないぶん、口うるささが加速して…
佐藤さんと母親は、若いときからあまり折り合いがよくなかったというが、年を取ってお互いに丸くなるかと思いきや、まったくそうはなっていなかった。 「母は、年を取って体が思うように動かなくなったぶん、さらに口うるささが加速しました。でも、年を取ればあちこち悪くなるのは当たり前ですから。お互いに悪態をつきながら、それでもサポートすることが増えていって…」 厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、主な介護者が「ほとんど終日介護にあたったいる」という割合は、「要介護1」では11.8%だが、「要介護2」は17.0%、「要介護3」は31.9%、「要介護4」は41.2%、「要介護5」は63.1%…と、介護度が重くなるほど、負担も重くなっていく。 介護サービスを活用しようにも「他人に世話をされたくない」と母親はかたくなだ。しかし、強気な口調で他人の介入を拒む母親も、老いは確実に進んでいる。 女性はケアマネージャと相談し、母親を老人ホーム入居させるべく動き始めた。