ファミレスなのにファミレスっぽくない!お客の心を掴む㊙戦略
過去最大の赤字からの復活~儲かる!「真の客目線」戦略とは?
サガミをアップデートさせたサガミホールディングス会長・鎌田敏行(74)は海外に数多くの飲食事業を立ち上げてきた伊藤忠商事の元商社マン。苦戦する経営を立て直すため2007年、サガミにやってきた。 当時のファミレス業界は低価格を売りにしたチェーンが勢いを増し、激しい価格競争を繰り広げていた。安さが売りではないサガミからは次々と客が離れ、売り上げは激減。そこでもう一度客を呼び戻そうと、「割引券」の大量配布に打って出た。料理の値段を下げないでどうにか窮地をしのごうとしたのだ。 しかし、そんなことをやり続けた結果、2010年には過去最大となる29億円の赤字に。厳しい逆風が吹き荒れる中で、2011年、鎌田は社長に就任した。 「成果が出ていないのは、やり方が間違っているわけです。従業員全員の発想を変えていかないといけない」(鎌田) 何が間違っているのか。鎌田は来る日も来る日も店に足を運び、問題点を徹底的に洗い出していく。すると「ある光景」を目にする。「カツ丼ざるそばセット」を注文した客がそのボリュームに困惑。そのまま観察していると、結局食べきれず半分近く残していた。 従業員に「量はもっと減らした方がいいんじゃないか」と言うと、「たくさん食べられるほうがお客様は喜ぶに決まっています」。その言葉に鎌田は愕然としたという。 「本当にお客様が望むことに対応できているかどうかを考えると、今までやってきたことは違う。だから考え方を変えなければならないですね、と」(鎌田) 従業員たちは古い価値観に囚われ、お客が本当に求めていることを分かっていない。そこでまず行ったのが客への「100万人アンケート」。大量に集まった客の本音は「女性や高齢者向けの量が少なめで品数の多いメニューが欲しい」「値段が高くてもおいしいウナギが食べたい」など、これまで社員が信じきっていたことと大きく違っていた。 これを受けて鎌田は思いきった改革に打って出る。 「今日までやってきたことは全部変える。そういう気持ちで仕事に取り組んでほしい」 当時、鎌田と共に改革に携わっていた経営企画部・吉本康之は「『サガミの常識は世間の非常識』と言われた。自分たちは正しいと思っていたのに、それを『非常識』と言われたのはショックでした」と言う。