部下の証言否定も矛盾露呈 斎藤知事、百条委で公益通報巡り平行線、主張の溝埋まらず
告発文書は3月の時点でマスコミ各社に送付され、同様の文書が4月4日までに県の公益通報窓口に届けられている。
井ノ本知明前総務部長は懲戒処分に当たり、公益通報窓口の調査結果を待つべきか斎藤氏と協議したが「知事から『風向きを変えたい』という話があった」と証言。男性は調査結果が出る前の5月、停職処分とされた。
斎藤氏はこの点も「風向きを変えたい旨の発言をしたことは全くない」と強く否定。処分を含めて「初動は適切だった」と強調した。
結局、告発文書が公益通報なのか、斎藤氏の言う懲戒処分に該当する「非違行為」なのかといった根幹部分で最後まで斎藤氏と部下職員との認識の差は埋まらず、議論は平行線で終わった。
■来月に報告書試案
告発文書を巡っては、百条委員会の調査とは別に、外部弁護士による第三者委、結果を既に公表した県主導の公益通報に関する内部調査が併存し、主体ごとに異なる結論が導き出される可能性がある。
調査対象である斎藤元彦知事は不信任決議による失職後、11月の知事選で再選。仮に百条委が一定の疑惑を事実と認定しても結論に法的拘束力はないが、一連の県の対応を否定する内容となる可能性もある。
もっとも兵庫県議会の場合、今回の文書問題を巡り、拘束力のない問責決議や辞職勧告ではなくすでに〝最終手段〟ともいえる不信任を決議している。地方自治に詳しい摂南大法学部の中沼丈晃教授は「斎藤氏が再選した以上、議会が再度信を問えば、ブーメランとなって県政停滞の責は議会に向かう」と指摘する。
百条委の奥谷謙一委員長は来年1月27日の次回会合で報告書試案を出す考えを示し、「証言の食い違いや記憶違いがあり、どう取りまとめていくかしっかり協議したい」と話した。
一方、第三者委は来年3月上旬に報告書をまとめる予定。第三者委の調査は文書の事実関係の確認と県の対応の評価にとどまり、担当者は「第三者委に政策提言は求められていない」と話す。県主導の内部調査は今月11日、斎藤氏のパワハラ疑惑について「確証は得られなかった」との結論をまとめているが、第三者委が異なる結論を出すこともあり得る。