日本の1970年代と同様の経済成長期にあるベトナムが迎えたカタルシス、「ロータス」の運用責任者に聞く
1969年末から1989年末まで20年間の配当を含むTOPIX(東証株価指数)の累積リターンはドル建てで4710%です。この間に円ドルレートが360円から144円に約2.5倍になったため、株価の20倍増がドル建てにすると50倍近い上昇率になりました。これは、同期間のS&P500の累積リターン804%やNASDAQの355%を大きく上回っています。この日本の「黄金期」と同じような輝きをベトナムに感じます。
日本の1970年代を代表する政治家は田中角栄氏です。田中金脈問題やロッキード事件など汚職が社会的な問題になりました。現在のベトナムも政治家が職権を使った不正を行っていることがたびたび問題になっています。それらの事件が起こるたびに、「こんな国は信頼できない」、「こんな国には投資できない」などという議論にもなりますが、1970年代の日本で政治家の汚職は問題になりましたが、それによって日本の経済がおかしくなったということはありませんでした。株価は1989年まで20年間にわたって上昇したのです。
株価の上昇は、その背景として経済成長がなければならないと思います。その点で、今、高い経済成長の入り口に立ったベトナム株式市場は、非常に魅力的な市場であると考えています。
――ベトナムが今後も成長を続けるだろうと考える根拠は?
「安定した政権と良好な国際関係」、「労働力」、そして、「インフラの整備」です。まず、「安定した政権」によって、ベトナムの失業率は1.5%という低い水準で安定しています。共産党が1党独裁で問題をはらんでいるのではないかという見方もあるでしょうが、現在のベトナムは、一時期の中国がそうであったように「左にウインカーを出しながら、右にハンドルを切る」と例えられたような、共産党政権でありながら経済政策は資本主義的です。また、政権は4人の集団指導体制をとっていて、1人に権力が集中するような体制にはなっていません。「良好な国際関係」という点では、14の自由貿易協定を結ぶなど、世界の生産基地として国内に産業を誘致してこようという強い意志を持っています。