「東京駅から12分と立地抜群」「海抜は低め、家賃も低め」…。23区でも屈指の閑散駅・尾久駅は“住むとちょっといい街”だ
■人が少ないのに商店街が4つもある 地元の方も語っていたが、この地域には商店街が多い。少し歩いただけで「おぐぎんざ商店街」「熊野前商店街」「小台大通り商店街」「小台銀座」などにたどり着くことができる。 そのうち、「たぶん最も賑わっている」と地元民が推す「おぐぎんざ商店街」を訪ねた。JR尾久駅から歩いて10分ほどで、同商店街の入り口にたどり着く。そこから約300mの通りに、50以上の商店が並ぶ。 同商店街の組合が発足したのは1959年のこと。それより以前から、通りには多くの店が商っていた。街の歴史や、住みやすさのポイントをうかがうため、方々を訪ねて歩くと「そういう話なら『たうん』のご主人が適任だよ」と、商店街の関係者が教えてくれた。
というわけで、商店街の北側の端に位置する「珈琲専科たうん」におじゃました。紙タバコが吸える、地元民の憩いの場だ。 長いカウンターと4人掛けのテーブルが10脚。週末の午後、客はひっきりなしだ。今回は珈琲とケーキのセット(800円税込)をオーダーした。ちなみにブレンド珈琲の単品は400円だ。深い味わいの珈琲と、甘さを押えたモンブランのマッチングが素晴らしい。 今年でオープンから43年目を迎えるというご主人の年齢は83歳。「お店と尾久のお話を聞かせてください」とお願いすると、快諾してくれたのだが、「色男じゃねぇからさ、顔の写真と名前を出すのは勘弁してくれ」とのこと。
おじゃました日、ご主人はブルックスブラザーズの青いシャツをさらりと着こなしていた。背筋を伸ばして立ち働く姿は粋で男前。とても80歳を過ぎているとは思えない。 「この辺りはね、昔は表通りから一歩入ったら家族で経営している小さな町工場がたくさんあったんだ。家族全員で働くからさ、三度三度の飯を作る隙がないだろ。だから、商店街にはお惣菜屋さんとか、飲食店がたくさんあってね。どこも繁盛していた。 ところが、最近は勤め人も増えて、工場の跡継ぎも不足しているから、商店街の様子も少しずつ変わってきた。それにモノの値段がどんどん上がっているだろ。だから商売がやりづらくなっているというのもあるね。