「東京駅から12分と立地抜群」「海抜は低め、家賃も低め」…。23区でも屈指の閑散駅・尾久駅は“住むとちょっといい街”だ
ただ、住む側として決して悪いことではない。親の代から同エリアに暮らす40代の男性が次のように語ってくれた。 「尾久駅前は静かだけど、東尾久のほうに行くと商店街もたくさんあるし、賑やかですよ。この地区は、商店街が強いから大きなショッピングモールみたいなものはないんだよ。そのぶん古くからやっている個人店が多いから、最近はそれを目当てにしたお客さんも多い。あと、尾久は他に比べて家賃が安いから、若い家族も増えているんですよ。そういう意味では活気のある街ですね」
調べてみると確かに周辺地域に比べて家賃相場は安い。JR尾久駅を起点にした近隣駅の、ひとり暮らし用マンションの家賃相場(1R~1DK)は以下の通りだ。 尾久駅付近の家賃は近隣の他の駅に比べて2万円~4万円ほど低めだ。これも「住むとちょっといい街」の魅力のひとつといえる。 しかし、なぜ安いのか。前出の地元民は次のように語る。 「うーん、確かなことはわからないけど、ここらは海抜が低いからね。隅田川、荒川が氾濫したら水没しかねない。そういうことも家賃の安さに結びついているのかもしれないね」
気になったので調べてみた。 地域の北側すぐには隅田川が、その向こうには荒川が流れている。画面左側の北区から、JRの線路を越えて荒川区に入ると、隅田川に向かってかなり低くなっているのがわかる。 国土交通省のハザードマップによると、この地域は洪水浸水想定区域となっており、浸水の想定最大規模は場所にもよるが、大きなところで3~5mだ。隅田川と荒川に挟まれた足立区小台は想定最大規模が5~10mだ。 地元の方が語る通り、こうした立地条件が家賃の安さに表れているのかもしれない。ただし、先日(8月21日)に東京都で発生した1時間100mmのゲリラ豪雨でも、特に被害はなかった。防水施設が発達したために、近年では「水の心配」は減っているのかもしれない。