航空管制官はキャパオーバーに? 増える航空機にどう対策するか
■旗から無線、レーダーへ
20世紀の初め、航空が始まった頃は航空機の構造や航法が未熟だった。地上や空中で衝突事故、墜落事故が多発し命がけで冒険飛行に挑戦した「飛行機野郎」たちには多くの犠牲者が出た。 時代が進むにつれ、航空機に次々と改良が加えられ大型化した。乗客輸送が始まると、飛行に安全性、効率と定時制が求められ空の交通整理をする「航空管制」が行われるようになった。
「フラッグマン」と呼ばれた係員が、滑走の可否を「Go(進行)」、「Hold(止まれ)」と旗で知らせた。これが航空管制官の始まりで、信号用の旗、メモ帳、昼食、水をパラソルつきカートに積んで、飛行機の滑走開始場所に常駐し、「風向き」を知らせていた。 無線が実用化すると、見晴らしのよい場所に設けられた「管制塔」で滑走路上の飛行機と無線電話を使った管制が始まった。レーダーが登場すると、飛行機は動く点として表示され、航空管制側と飛行機側で周囲の飛行機や地形が視覚でモニターできるようになり、安全と効率が格段に進歩を遂げた。
■大空の“コンダクター”
航空管制の目的は、安全で秩序ある飛行にある。これがないと、空や飛行場で飛行機同士がニアミスしたり、衝突したりしかねない。航空管制官は、パイロットに離陸や着陸の順序、飛行の方法、時間の「通信」「航法」「監視」に基づいて指示を出したり、要求の承認をしたりする。
日本の空には、目に見えない航空路という空の高速道路が張り巡らされている。航空路とは、航空機が航行する空中の通路として国土交通相が指定するもので、幅は原則として18キロ、ないし14キロ。多くの航空機が安全・最適に飛べるよう全体を「流れ」として捉え、それを調整する航空交通流管理(ATFM)が行われている。 空港の管制塔で行われている飛行場管制業務には、「管制承認伝達」(クリアランス・デリバリー)、「地上管制」(グランド・コントロール)、「飛行場管制」(タワー・コントロール)の3つがある。航空機や関係車両に対し、それぞれチーム15人の管制官が指示を送っている。 「飛行場管制」を行う管制官は、直前に離陸した飛行機の後方乱気流の影響を受けないよう、間隔を確認して離陸許可(離陸クリアランス)を出し、それを受けてパイロットは離陸を開始する。離陸すると、ターミナルレーダー管制所の出域管制官に引き継がれ、目的地別に最も適したルートで誘導され、航空路管制(ACC)を受ける。 空港周辺の空域を除き、航空路を飛行する航空機には航空交通管制部が飛行経路、高度の指示等の管制を行う。4つの飛行情報区ごとに航空交通管制部《札幌(札幌市)、東京(所沢市)、福岡(福岡市)、那覇(那覇市)》が設けられ、細分化されたセクターごとに3人の管制官が担当している。 目的となる空港が近づくと、航空路を飛行してきた着陸機はターミナルレーダー管制所の「進入管制官」の指示下に入る。進入管制官は到着機の順番付けをして、安全間隔を保ち1本の着陸ルートに乗せて、所定の高度にまで降下すると、ローカルコントロール席の「タワー管制官」に引き継がれる。 タワー管制官は着陸許可(クリアランス)を出し、ILS(計器着陸システム)に乗った航空機を誘導・監視して着陸させる。着陸機は滑走路を出ると、「グランドコントロール管制官」が誘導路から空港ビルの到着スポットまでを誘導する。こうして1サイクルの飛行は終了する。